【2020年版】エネルギーの源、炭水化物の基本を知る。

炭水化物は大きく糖質と食物繊維に分けられる栄養素です。
糖質は体内で消化・吸収されてエネルギーとなりますが、反対に食物繊維は消化・吸収されずに体の調子を整えるのに働きます。

炭水化物の機能

糖質は利用されやすいエネルギー源 脳や赤血球は糖質でしかエネルギーを補給できない

主にエネルギー源として働き、炭水化物から摂取するカロリーのほとんどは糖質由来です。
糖質のエネルギーは4kcal/gで、消化が早く、すぐにエネルギーに変換されるのが特徴です。
脂質やたんぱく質も同じくエネルギー源となりますが、基本的に脳や神経神経、赤血球、精巣、骨格筋などにはエネルギー源にブドウ糖(グルコース)という糖質しか利用できません。


食物繊維はエネルギーにはならずに体の調子を整える

食物繊維は人の消化酵素では分解できないため、エネルギーは少なく、体を構成することもありません。
そのため、以前は特に摂取する必要のない栄養素だと考えられていました。
しかし、今日ではさまざまな健康効果が明らかになり、食物繊維の摂取基準も設けられています。

食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に大きく分けられます。
不溶性食物繊維は便秘や腸内環境の改善に効果があるとされています。
水溶性食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにしたり、コレステロールの吸収を妨げたりすることで、糖尿病や脂質異常(高脂血症)の予防や改善に役立ちます。

炭水化物の消化、吸収、代謝

糖質は血糖として全身にエネルギーを送る

摂取した糖質は唾液や膵液のアミラーゼという消化酵素によってグルコース(ブドウ糖)といった単糖類に分解されます。
グルコースは小腸で吸収された後、肝臓に取り込まれて血液に入り、血糖となって全身に運ばれ、エネルギーになります。
ほかの三大栄養素(たんぱく質や脂質)に比べ、消化は早く進みます。

糖質の代謝には主にビタミンB1が関わる

糖質はたくさんの化学反応を経てエネルギーになっていきます。
その過程には様々な酵素や補酵素が利用されます。
利用される補酵素の1つにビタミンB1があるため、糖質の代謝にはビタミンB1が必須です。
ビタミンB1は豚肉や玄米などに多く含まれます。
食物繊維は胃や腸で、腸内細菌を増やしたり満腹感を与えたりしてくれる

水溶性食物繊維は腸内細菌によって発酵することで、腸内を酸性にします。酸性になった腸内で乳酸菌やビフィズス菌が増殖します。
不溶性食物繊維は水分を吸収して膨張することで、摂取した食品の胃での滞留時間を長くさせます。
その結果、腹持ちがよくなるとされています。
食物繊維は消化・吸収されることがないため、大腸まで運ばれて排泄されます。

炭水化物の摂取基準

炭水化物の摂取基準

一般的な成人の男女で摂取エネルギーの50〜65%を炭水化物で摂取することが推奨されています。
摂取エネルギーの目安は下の表を参考にしてください。
例えば、身体活動レベルがふつうの20代女性の場合、推定エネルギー必要量は2000kcal/1日です。
そのため、炭水化物から摂取するエネルギーは1000~1300kcalが目安となります。

食物繊維の摂取基準

アメリカ・カナダの食事摂取基準では、24g以上/1日が理想とされています。
しかし、成人日本人の食物線維摂取量は13.7g/1日程度に留まります。
実生活を考え、摂取基準ではその中間値が採用されています。


過不足のリスク

糖質の過剰摂取は肥満につながる

過剰摂取による健康障害の報告はありません。
しかし、余分な糖質は脂肪として貯えられるため、炭水化物の過剰摂取が続くと肥満につながるリスクがあります。
また、総エネルギーに対する炭水化物の割合が大きくなると、糖尿病の発症に影響があると考えられています。

食物繊維の過剰摂取は栄養の吸収を阻害する

食物繊維は消化、吸収されないという特徴からビタミンやミネラルなどの他の栄養の吸収を邪魔したり下痢になったりすることがあります。
通常の食事で過剰摂取を心配する必要はありませんが、サプリで摂取する場合には摂取量を確認しましょう。

糖の不足が続くと筋肉が減少したり、脳がパワー不足になったりする

糖が不足して病気になることはありませんが、不足が長期間続くとたんぱく質がエネルギーとして利用されるようになるため、筋肉が減少します。
さらに体脂肪が過度に分解さると、嘔吐などの症状を伴うケトン血症になることがあります。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が不足すると思考力、集中力、判断力等の低下につながります。
そのため、極端な糖質制限は脳がエネルギー不足に陥ってしまいます。
なお、脳は基礎代謝の約20%ものエネルギーを消費しています。

食物繊維の不足は便秘や生活習慣病のリスクが上昇する

食物繊維が不足すると排便がスムーズにならず、便秘になります。
また、食物繊維の不足は様々な生活習慣病の関連があるとされています。
心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、がん、循環器疾患等との関連が認められている研究報告が多数存在します。


炭水化物が多く含まれる食品10品目

炭水化物が多く含まれる食品

出典 文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)

砂糖や穀類、芋類等の植物性食品に多く含まれています。
甘いものやアルコールも炭水化物を多く含みますが、ビタミンやミネラルの含量が少ないため、こうした食品を中心とした食生活は推奨されていません。

食物繊維が多く含まれる食品

食物繊維は植物性食品の穀類、野菜類、きのこ類、果実類、海藻類、豆類などに豊富に含まれます。
「繊維」という名前がつく通り、はごたえのある食品に食物繊維が多く含まれている傾向があります。
ざらつくからといって裏ごしなどをしてしまうと食物繊維が減少してしまいます。
また、肉や魚には食物繊維がほとんど含まれません。

参考文献

厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成28年)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社
中嶋洋子(2017)「改訂新版栄養の教科書」新星出版社

著者 / 監修者