PMS症状に栄養状態が関係あり?亜鉛状態が関係するかも
月経前症候群(PMS)には、亜鉛が関係しているかもしれません。
体内の亜鉛状態とPMSの症状に関係があることが報告されています[1]。
この記事では、その報告の内容と、摂るべき亜鉛の摂取量および摂取のポイントをご紹介します。
PMS症状と亜鉛、抗酸化状態に関する報告
イラン、アフヴァーズ医科学大学のFathizadehらによって、血清亜鉛レベルおよび抗酸化能が高いほどPMSのリスクが低いと報告されています[1]。
~以下引用~
この研究は、PMSと血清亜鉛および抗酸化状態の関連を調べることを目的に、48名(うちPMS患者23名)の女子大学生を対象に、身体計測、血清の総抗酸化能(TAC)と亜鉛濃度、質問紙調査にもとづく食事調査を行ったものである。その結果、PMSを訴えた女子大生の血清TACおよび亜鉛濃度は、健康な女子大生と比較して低く、血清TACと亜鉛レベルの両方がPMSスコアと負の相関を示した。また、PMSの女子大生は健康な女子大生に比較して、筋肉量が少なく、マーガリンのような水素添加によって調製された硬化油脂の摂取量が多かった。著者らは、TACおよび亜鉛の血清レベルが高いほど、PMSのリスクが低くなると主張している。
~引用終わり~
亜鉛の摂取状況と摂取のポイント
PMSの有病率は世界全体で47.8%であり、とくにアジアで高率であるといわれています。
アメリカ産科婦人科医師会は、PMSの診断基準として、うつ、不安、乳房の圧痛、四肢の腫れ、頭痛、腹部膨満などを示していますが、妊娠可能な女性の70〜90%はこれらの症状の少なくとも1つを有しているといわれています。
PMSの原因はよくわかっていません。
低亜鉛状態が学習意欲の低下と行動遮断につながる気分障害を起こすことや、女性ホルモンの分泌に悪影響を示すという報告があり、イランには国内に亜鉛欠乏が発生している地域があることと、PMS有病率がきわめて高い集団があることから、上記のような研究が企画されました。
この研究だけで、PMSの発症に亜鉛不足が関わっていると断定はできませんが、PMSと亜鉛には何らかの関連があるのかもしれません。
国民健康・栄養調査における亜鉛摂取量の平均値は男性8.8 mg/日、女性7.3 mg/日であり、食事摂取基準[2]における亜鉛摂取の推奨量(成人男性11 mg/日、成人女性8 mg/日)を下回っています。
亜鉛については、摂取量を現状よりも2〜3 mg/日程度増やして、推奨量を目指すのがよいでしょう。
栄養機能食品の表示がされているサプリメントであれば亜鉛の摂取上限量を超える心配はありませんが、可能であれば以下に示す亜鉛含有量の高い食品を利用し、食事の中で無理することなく亜鉛の摂取を増やすことが勧められます。
亜鉛は牡蠣や牛肉に多く、他にも、魚介類、ナッツ、乳製品などにも幅広く含まれています[3]。
牡蠣には100 g(5個程度)に14.5 mgと非常に多くの亜鉛が含まれていますが、連日、牡蠣を食べることはできないでしょう。
穀物などに含まれるフィチン酸などの食物繊維が亜鉛の吸収を妨げるといわれてきましたが、一般的な献立に含まれる程度であれば、亜鉛の吸収にはほとんど影響を及ぼさないことがわかってきました。
それゆえ、食べ合わせを気にせず、牛肉などの亜鉛を多く含む食材を少しずつ増やすようにすればいいでしょう。
引用文献
[1] Fathizadeh S, Amani R et al. Comparison of serum zinc concentrations and body antioxidant status between young women with premenstrual syndrome and normal controls: A case-control study. International Journal of Reproductive BioMedicine. 2016; 14(11): 699-704.
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)