栄養を摂って免疫力を維持!~免疫機能と栄養素の関係~

免疫機能と栄養の関連が述べられている報告をご紹介します。
 1. ビタミンC
 2. パントテン酸
 3. セレン

報告①:ビタミンCが免疫機能の維持に必要

ニュージーランドオタゴ大学のAnitraらにより、ビタミンCの免疫機能への関連が報告されています[1]。

~以下引用~
このレビューは、病原菌などの異物が体内に入り込む際の皮膚バリアの完全性や白血球(白血球の種類には、顆粒球と呼ばれる3種類の好中球、好酸球、好塩基球およびリンパ球とマクロファージの計5種類がある)機能など、免疫系におけるビタミンCの役割とそのメカニズムを複数の報告からまとめたものである。
ビタミンCは皮膚に存在するコラーゲンの生成に必要なビタミンである。皮膚は、体の表面を覆っている器官の一つで、病原菌などの異物が体内に入り込むのを防ぐ。ビタミンCは皮膚などに存在するコラーゲンの生成に必須なビタミンであるので、自然免疫の観点では、きわめて重要なビタミンである。ビタミンCが欠乏すると、コラーゲンの合成ができないので、皮膚や血管がもろくなり、破壊され、病原菌などの異物が体内に入り込みやすくなる(ビタミンC欠乏は壊血病と呼ばれる)。また、ビタミンCには抗酸化作用もある。白血球中のビタミンC濃度は高く、血管内において好ましくないはたらきをする活性酸素種を除去する働きを持っている。一方で、ある条件下ではビタミンCは、酸化促進剤ともなり、病原菌を攻撃する活性酸素を発生させる。また、好中球などの貪食細胞の走化性、貪食作用を高め、病原菌を死滅させる作用もある。さらに、マクロファージが死滅させた病原菌の破片や役目を終えた好中球を完全に消去させる作業にもビタミンCは必要であり、結果的に、ビタミンCは、細胞のネクローシス(壊死)を減少させ、組織の損傷を防ぐことになる。
なお、リンパ球におけるビタミンCの役割はあまり明確ではないが、B細胞およびT細胞の分化と増殖を増強することも報告されている。
つまり、ビタミンC欠乏症は、免疫力の低下をもたらし、より高い感染感受性をもたらす。感染予防には十分な量のビタミンC摂取が必要であり、毎日200 mg程度の用量でビタミンCを補充することを推奨する。
~引用終わり~

この報告では、ビタミンCが微生物の侵入に対して、微生物を取り込んで分解する細胞(好中球やマクロファージ)の働きや、抗体をつくるのに関わる細胞(T細胞やB細胞)の分化と増殖に関与するといった様々な方面で必要と述べられています。
ビタミンCは自然免疫と獲得免疫の両面から機能の維持に大切であると言えそうです。

報告②:多量のパントテン酸摂取が細菌の増殖を防ぐかも

中国のHeらによって、パントテン酸(ビタミンB5)摂取が細菌の増殖を抑制することが報告されています[2]。

~以下引用~
この研究は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis (MTB) strain H37Rv)に感染したマクロファージにおいて、ビタミンB5(パントテン酸)の炎症性および抗菌効果、およびビタミンB5の結核治療効果を調べることを目的に、実験動物モデルを用いて実験を行ったものである。
ビタミンB5がマクロファージの炎症反応と抗菌反応におよぼす影響を調べるために、結核菌に感染させたマウスへのビタミンB5の投与(7.3 mg/mLの濃度のビタミンB5水溶液を0.2 mL(1.46 mgのビタミンB5)、実験期間中、毎日経口投与)が炎症性シグナル分子の活性化、炎症性サイトカインの産生、および細菌感染に対して、どのような影響を与えるかを調べた。さらに、ビタミンB5の投与が、感染させたマウス肺における結核菌除去能力と炎症細胞の割合の調節にどのような影響をおよぼすかも調べた。
その結果、ビタミンB5の投与はマクロファージの貪食作用と炎症作用を増強し、マウス肺での結核菌コロニー形成単位の数を減少させた。また、T細胞による炎症性サイトカインの発現も増加させた。
結論として、結核菌を感染させたマウスへのビタミンB5の投与は自然免疫と獲得免疫を調節することにより、結核菌の増殖を大幅に抑制した。
~引用終わり~ 

この報告では、結核菌感染マウスへのパントテン酸の大量経口投与によって、肺での結核菌の増殖が抑制、T細胞による炎症性サイトカイン(免疫系の働きによって産生される生理活性物質)の産生の増加が述べられています。
この論文には、飼料中からどの程度のパントテン酸を摂取しているのか記載がありません。
ちなみに、成熟マウスの平均的なパントテン酸摂取量は0.06 mg/日程度です。
1.46 mg/日の量のパントテン酸が経口投与されています。約25倍となります。
大量のパントテン酸の摂取により細菌の増殖を抑えられるのかもしれません。

報告③:適量のセレン摂取が免疫増強につながる

米国ハワイ大学のAveryらによって、セレン摂取と免疫との関連が報告されています[3]。

~以下引用~
この論文は、多数の報告をレビューし、ヒトの免疫と食事性セレンとの関連を検討したものである。
セレン摂取量が少ないと生成量が減少するセレノプロテインは25種類あり、それぞれが様々な生理機能に関わっている。免疫との関連についても、培養細胞、動物、ヒトを対象にした研究が行われている。
後天的に獲得される適応免疫においては、セレンの十分な摂取はT細胞やB細胞を活性化する。一方、ノックアウトマウスモデルでの研究では、ある種のセレノプロテインの合成に関与する遺伝子の欠損がT細胞の成熟と活性化、B細胞による抗体産生を促している。
先天的な自然免疫もセレンによって影響を受ける。いくつかの研究から、セレン摂取量およびセレノプロテイン類がマクロファージの働きを調節すると実証されている。セレンと好中球の機能に関する報告は少ないが、セレン摂取量の増加が内因性酸化ストレスから好中球を保護することが報告されている。なお、NK細胞の機能もセレン摂取量の影響を受ける。
病原体に対する免疫にもセレンが関与している。マウスにおけるセレン欠乏が、自然免疫を低下させ、リステリア菌への感染リスクを高めることが示されている。多くのセレノプロテイン類が持つ抗酸化特性は抗ウイルス免疫の増強に寄与するが、抗酸化特性が認められないセレノプロテイン類もウイルスからの保護において重要な役割を果たす。
~引用終わり~

この報告では、適切な範囲のセレン摂取が免疫に関わる細胞の働きの活性化や、細菌やウイルスに対する免疫増強に寄与すると述べられています。このことより、セレンを欠乏させないことだけでなく、セレンを過剰に摂取しないことも免疫維持につながるといえそうです。

まとめ

ビタミンC、パントテン酸、セレンが免疫機能を一時的に増強するために必要かもしれません。
これらの栄養素を摂るためのポイントはこちらをご覧ください。
栄養学の知識を身に着けて、細菌やウイルスに負けない体をつくりましょう。

引用文献

[1] Anitra C. Carr, Silvia Maggin et al. Vitamin C and Immune Function. Nutrients. 2017; 9(11): 1211.
[2] He W, Hu S et al. Vitamin B5 Reduces Bacterial Growth via Regulating Innate Immunity and Adaptive Immunity in Mice Infected with Mycobacterium tuberculosis. Frontiers in Immunology. 2018; 9: 365
[3] Avery JC, Hoffmann PR. Selenium, Selenoproteins, and Immunity. Nutrients. 2018; 10(9).

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