栄養を摂って免疫力を維持!~細菌やウイルスと戦うために必要な栄養摂取のポイント~

免疫力とは?細菌やウイルスから体を守る仕組みを簡単に解説

免疫力とは、「疫を免れる力」と書くように、感染や病気を回避するための防御力のことを言います。
体には病原体などの異物が入ってきたときにそれを排除しようと働くシステムが備わっています。

自然免疫と獲得免疫

免疫は、自然免疫と獲得免疫に分けることができます。
異物(病原体)が体内に侵入すると、まずは自然免疫が働きます。異物の侵入から数時間以内に作用します。
一方で、獲得免疫は感染によって身につく免疫系で、異物が自然免疫系を突破したときに作動します。

免疫細胞の働き

自然免疫系、獲得免疫系とも、様々な役割を持つ免疫細胞たちが働くことで体を守ります。
異物が入ってくると、まず白血球の好中球やマクロファージが異物を取り込んで分解(=貪食作用)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)も異物を直接攻撃します。
これら自然免疫系の細胞は最前線で戦いながら、他の免疫細胞(T細胞)に対して抗原提示を行い、B細胞が抗体をつくります。
これによって、異物特異的な免疫を獲得し、異物を排除していきます。

すなわち免疫力が備わっている状態とは…

これらのことより、細菌やウイルスに負けない体をつくるには、まずは自然免疫が働ける状態を整えることが大切だと言えそうです。
加えて、自然免疫が破られて感染してしまったときに獲得免疫が速やかに働けるようにしておくことも大切であると言えるでしょう。

栄養素不足は厳禁!免疫機能を整えるために必要な栄養素

免疫機能を整えて細菌やウイルスに負けない体をつくるには、今現在、あなたが必要とする栄養素をしっかり摂ることが重要です。
ビタミンC、パントテン酸、セレンにおいては免疫との関連が報告されています。(報告の内容はこちら )
これらの栄養素について、摂取するためのポイントを紹介します。

ビタミンC摂取のポイント

日本人の食事摂取基準において、ビタミンCの摂取推奨量は100 mg/日(12歳以上)と策定されています[2]。
この数値は、ビタミンCの欠乏症である壊血病を予防するための必要量ではなく(壊血病を予防するためだけなら10 mg/ 日程度)、心臓血管系の疾病予防効果ならびに有効な抗酸化作用が期待できる血液中の濃度を維持するための摂取量です。
上に紹介した報告によれば、毎日200 mg程度の摂取で感染予防および重症化予防につながると述べられています。
ビタミンCは野菜や果物に多く含まれています。加熱によって分解されてしまう、調理中に野菜や果物の細胞が破壊されると水に溶けだすといった性質があり、調理する場合は工夫が必要です。
毎日200 mg程度のビタミンCを通常の食品から摂るのは難しいので、食品サプリメントや第3類医薬品のビタミン剤からの補充がお薦めです。

パントテン酸摂取のポイント 

パントテン酸は欠乏の予防のために、目安量が策定されています。
目安量とは、欠乏症を予防するには十分な量である、という意味です。
その目安量は、5 mg/日と策定されています[2]。
様々な食品に含まれていますが、レバーや納豆、サーモン、玄米などに特に多く含まれています。
日々の食卓に取り入れてみると良いでしょう。

セレン摂取のポイント

セレンの摂取量の推奨値は成人男性で30 µg/日、成人女性で25 µg/日とされていますが、これは重篤な心筋障害である克山病というセレン欠乏症の予防に必要な最小の摂取量から定められたものであり、セレノプロテイン類の体内での合成量を十分にするには約50 µg/日のセレン摂取が必要です。
一方、セレンの慢性中毒を念頭においた耐容上限量は成人男性450 µg/日、成人女性350 µg/日ですが、200 µg/日のセレンをサプリメントから摂取し続けた集団にⅡ型糖尿病の発生リスクが上昇したという報告があることから250 µg/日くらいを実質的な摂取の上限と考えるべきです。
日本人は平均的に見て50 µg/日を超える十分なセレン摂取が達成できていることから、セレン摂取を適切な範囲に保つにはエネルギー産生栄養素バランスのとれた献立を維持することが必要でしょう[2]。

他にも免疫機能には様々な栄養素が関与する

なお、免疫細胞の構成成分であるたんぱく質、体内で核酸やタンパク質の合成に必要なB群ビタミン特に、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸も免疫機能を保つには必要です。
また、活性酸素の働きを抑えるβカロテン(ビタミンA前駆体)やビタミンEも、免疫機能を保つには必要であると言われています。
なお、ビタミンAには抗酸化力はありません。

まとめ:免疫力を高める栄養も抑えつつ、日々の食生活を大切に

特別に、ある特定の期間に限り、免疫力を高めるためには、ある種の栄養素、例えば、ビタミンC、パントテン酸を積極的に第3類医薬品のビタミン剤あるいはサプリメントから補充することが必要であるかもしれません。
その前提として、日々、バランスの取れた食生活(日本人の食事摂取基準で示された栄養素を摂ることです[2])をすることを忘れてはいけません。
栄養学の知識を身に着けて、細菌やウイルスに負けない体をつくりましょう。

参考文献

[1] A・キャサリン・ロス,ベンジャミン・カバレロ,ロバート・J・カズンズ,キャサリン・L・タッカー,トーマス・R・ジーグラー「ロス 医療栄養科学大辞典 健康と病気のしくみがわかる」(2018)西村書店
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-04-16)

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