頭の働きは亜鉛状態と相関?

頭の働きは亜鉛状態と相関するかも

亜鉛摂取量や体内の亜鉛状態が認知機能に関係することが報告されています[1]。
亜鉛を多く含む食材を摂ることで、頭の働きを良くすることができるかもしれません。
報告の内容と、亜鉛の摂取基準および摂取のポイントをご紹介します。 

亜鉛摂取と認知機能に関する報告

イギリス、セントラル・ランカシャー大学のWarthon-Medinaらによって、亜鉛摂取量や体内の亜鉛状態と認知機能に正の相関があることが報告されています[1]。 

~以下引用~
この報告は、成人と小児の亜鉛摂取量または亜鉛栄養状態と認知機能の指標との関係について複数の研究をまとめたものである。成人を対象とし、サプリメントとして亜鉛を供給した、または亜鉛の食事摂取量を測定した研究18件(ランダム化介入試験12件、観察研究6件)のうち、9件で亜鉛摂取量または亜鉛状態と認知機能の1つ以上の指標との間の正の関連が認められている。
一方、小児を対象とした研究6件をメタ解析した場合、認知機能の指標に対する亜鉛の有意な影響は全体としては認められなかった。ただし、亜鉛補給により実行機能(複雑な課題の遂行に際し、既知の情報と新規の情報を組み合わせて、思考や行動を制御する認知システム)と運動機能の発達に関するいくつかの指標の改善が見られたことから、今後のさらなる研究が必要である。
~引用終わり~

亜鉛の摂取基準と摂取のポイント

紹介したWarthon-Medinaらの研究が解析の対象とした研究は、亜鉛サプリメントを投与しているものと、血清亜鉛濃度にもとづいて対象者の栄養状態を測定しているものが混在しています。
また、亜鉛サプリメントの投与水準は、成人・小児ともに10〜30 mg/日であり、小児の場合は亜鉛摂取の耐容上限量を超えている場合もあります。
亜鉛栄養状態が認知機能に影響を与えているという研究も含まれていますので、低亜鉛栄養状態が認知機能に対して悪影響を及ぼすということはいえそうです。
亜鉛サプリメントの効果も低亜鉛状態を改善した結果なのかもしれません。 

国民健康・栄養調査における亜鉛摂取量の平均値は男性8.8 mg/日、女性7.3 mg/日であり、食事摂取基準[2]における亜鉛摂取の推奨量(成人男性11 mg/日、成人女性8 mg/日)を下回っています。
亜鉛の摂取については、まず、摂取量を現状よりも2〜3 mg/日程度増やして、推奨量を目指すのがよいでしょう。

亜鉛は牡蠣や牛肉に多く、他にも、魚介類、ナッツ、乳製品などにも幅広く含まれています[3]。
牡蠣には100 g(5個程度)に14.5 mgと非常に多くの亜鉛が含まれていますが、連日、牡蠣を食べることはできないでしょう。
穀物などに含まれるフィチン酸などの食物繊維が亜鉛の吸収を妨げるといわれてきましたが、一般的な献立に含まれる程度であれば、亜鉛の吸収にはほとんど影響を及ぼさないことがわかってきました。
それゆえ、食べ合わせを気にせず、牛肉などの亜鉛を多く含む食材を少しずつ増やすようにすればいいでしょう。 

引用文献

[1] M Warthon-Medina, V H Moran et al. Zinc intake, status and indices of cognitive function in adults and children: a systematic review and meta-analysis. Eur J Clin Nutr. 2015; 69(6): 649-61.

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)

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