カルシウムおよびビタミンDの摂取量と糖尿病に関する報告
日本国際医療センターの研究により、カルシウムとビタミンDの摂取と2型糖尿病のリスクの関連が報告されています[1]。
~以下引用~
この研究は、59,796人の健康な中高年の日本人を対象にした前向きコホート研究で、2型糖尿病発症がカルシウムとビタミンDの摂取量との間に関連性があるか否かを調査したものである。
59,796人の健康な中高年の日本人を5年間、追跡調査した。その結果、1,114人の参加者が新たに糖尿病と診断された。ビタミンD摂取量が多い階層内においては、カルシウムの摂取量の増加に伴い、2型糖尿病罹患リスクが低くなる傾向が見られた。(Kirii K et al. 2009)
~引用終わり~
この報告は、ビタミンDが適正量摂取されていれば、カルシウムの摂取量を適正化することにより、 2型糖尿病の罹患リスクを下げることができる可能性を示唆するものです。
カルシウムの吸収にはビタミンDが必須です。
既知のことですが、ビタミンDの栄養状態が適正でないとカルシウムを摂取しても、体内に取り込まれにくいことを示しています。
日本におけるカルシウムとビタミンDの摂取
日本人の食事摂取基準におけるカルシウムの推奨量は成人男性で650~800 mg/日、成人女性で650 mg/日と策定されていますが[2]、厚生労働省が平成29年に行った国民健康・栄養調査によると、日本人のカルシウム摂取量の平均値は成人で509 mg/日であり[3]、不足傾向にある人が多いことが推察されます。
また、ビタミンDにおいては、成人における目安量として8.5 µg/日と策定されています[2]。
カルシウムおよびビタミンDを摂るには
カルシウムは、乳製品や小魚、大豆製品などに多く、牛乳には100 mLあたり110 mg程度のカルシウムが含まれています[4]。
カルシウムを摂りたい場合、まずはコップ1杯の牛乳から始めてみても良いかもしれません。
ビタミンDを含む食品は多くありません。食事による給源は魚肉に限られます。
サケ(紅鮭、しろ鮭)は1切れ(80 g)あたりのビタミンDが25 µg程度と非常に多く含まれています[4]。
なお、人でも、皮膚に存在するプロビタミンDが日光の紫外線によりプレビタミンDとなり、体温による熱異性化によりビタミンDが生成します。
5.5 μgのビタミンDを作るのに必要な日射量は、顔面と手の甲の面積を合わせた面積である600 cm2の皮膚で、つくばあたりの緯度で夏の正午であれば3.5分程度で、札幌あたりの緯度で冬の正午であれば76分程度で合成可能という報告があります[2]。
緯度と季節でずいぶんビタミンDの合成量は異なるので、食事による供給は大切です。
魚類が苦手な人にはビタミンDサプリメントがお薦めです。
おわりに
ビタミンDを充足させ、カルシウムを不足させないことが糖尿病予防につながるかもしれません。
魚や乳製品が苦手な方は、ビタミンD、カルシウムサプリメントを利用することをお勧めします。
1日当たりのビタミンDの必要量の概数は10 µg、カルシウムは10 mg/kg体重と覚えておくと良いと思います。
カルシウムは体重が70 kgならば、1日当たり700 mgとなります。
引用文献
[1] Kirii K, Mizoue T, Iso H et al. Calcium, vitamin D and dairy intake in relation to type 2 diabetes risk in a Japanese cohort. Diabetologia 2009; 52: 2542-2550.
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」,< https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html>(参照2020-03-04)
[4] 文部科学省「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-03-18)