ビタミンB1と運動中の疲労に関する報告
韓国の慶仁女子大学等の研究により、ビタミンB1の補充が運動中の疲労を軽減することが報告されています[1]。
~以下引用~
この研究は、運動中の疲労を防ぐためにフルスルチアミン(吸収性を高めたビタミンB1誘導体)補充の影響を検討するために、9名の女性被験者を対象に、プラセボ群、持久力トレーニング群、フルスルチアミン投与群のクロスオーバー試験を行ったものである。
持久力トレーニング群では4週間の持久力トレーニング(週5回)、フルスルチアミン投与群では4週間のフルスルチアミン投与(10 mg/kg体重の量を3回に分けて食後投与した。チアミンとしては6.6 mg/kg体重になる)を行った。被検者の平均体重は57 kg程度であるので、1日あたりのチアミン(=ビタミンB1)の補充量は約380 mgとなる。一般的な必要量の約300倍の量である。
4週間の介入試験後、すべての群において、自転車エルゴメーターを最大酸素摂取量の70%(50rpm)の強度で1時間行い、血液中のグルコース、乳酸、アンモニア、遊離脂肪酸、インスリン、グルカゴンおよびチアミン、セロトニンを測定した。さらに、RPE(自覚的運動強度,運動時の主観的な負担度を数値で表したもの)の評価を行った。
その結果、乳酸濃度は、持久力トレーニング群では運動開始15〜30分間の運動中において、フルスルチアミン投与群では運動開始15〜60分間において、プラセボ群と比べて有意に低い値を示した。アンモニア濃度は、持久力トレーニング群とフルスルチアミン投与群では供に、運動開始から15〜60分と運動終了後15〜30分において、プラセボ群と比べて大幅に減少した。さらに、持久力トレーニング群とフルスルチアミン投与群おいて、プラセボ群と比べて、RPEの有意な低下が見られた。(Choi SK et al. 2013)
~引用終わり~
この報告は、フルスルチアミンの継続的な補充が、持久力トレーニングを続けた時と当価の効力で運動の疲労を軽減できる可能性を示唆しています。
日本におけるビタミンB1の摂取
日本人の食事摂取基準によると、1日の摂取推奨量は成人男性で1.4 mg程度、成人女性で1.1 mg程度です[2]。
平成29年の国民健康・栄養調査によると、成人での平均摂取量は0.88 mgで[3]、不足気味な栄養素の一つであると言えそうです。
ビタミンB1は体内でエネルギーを作り出すときに必要であるため、運動する人にとってはより意識しておくべきビタミンであると言えるでしょう。
ビタミンB1摂取のために摂るべき食品
ビタミンB1は豚肉やうなぎ、玄米などに多く含まれています。
特に豚肉では、豚ヒレ100 gに1.32 mgのビタミンB1が含まれています[4]。
また、ビタミンB1は、代謝回転が他のビタミンと比べて特に高いので、毎日継続的に摂取することが必要です。
そのため、摂取カロリーを増やさずにビタミンB1を補充したいときは食品サプリメントあるいは第3類医薬品であるビタミン剤を活用することがお薦めです。
おわりに
運動後の疲労が気になっている人は、継続的にビタミンB1を補充してみるとよいかもしれません。
ビタミンB1の1日当たりの必要量の概数を1 mgと覚えておくとよいと思います。
今回紹介した論文は、フルスルチアミンを1日に約600 mg(チアミンとして約380 mg)補充した実験です。
フルスルチアミンは第3類医薬品です。食品サプリメントではありません。
ビタミンB1活性を持つ物質はたくさんあります。使用するときには、物質名をしっかり見ましょう。
ビタミンB1活性を持つ物質名の栄養学的な特徴を知りたいときは、管理栄養士に聞けばよいと思います。
引用文献
[1] Choi SK, Baek SH, Choi SW. The effects of endurance training and thiamine supplementation on anti-fatigue during exercise. J Exerc Nutrition Biochem. 2013; 17: 189-198
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」,< https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html>(参照2020-03-04)
[4] 文部科学省「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-03-18)