バターそっくりだけどその実態、違いは?トランス脂肪酸を含むマーガリンの健康への影響と上手な付き合い方

「健康に悪いから、マーガリンは避けるようにしている」あなたの周りにそんな人も少なくないかもしれません。

果たして、マーガリンは本当に悪なのか?そもそもバターとマーガリンは何が違うのか?マーガリンとの上手な付き合い方についてお話しします。

バター、マーガリンの違いとマーガリンの懸念点

一見、似たようなバターとマーガリン。そもそも何が違うのでしょうか?

バターは牛乳から分離したクリームを練って固めることで作られます。
一方、マーガリンは食用油脂(乳脂肪以外)に粉乳や乳化剤を加えて加工することで作られます。
元々、マーガリンはバターの代替品として開発されたものです。

バター、マーガリンが分類される油脂類は主に脂肪酸でできています。
この脂肪酸は構造の違いにより、「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」の2種類に分けられます。

原料の違いによってこれらの割合は異なり、バターなどの動物性油脂には飽和脂肪酸が、マーガリンなどの植物性油脂には不飽和脂肪酸が多く含まれます。

植物性脂肪を構成する不飽和脂肪酸は常温では液体です。
しかしながら、マーガリンは固形。
これは製造過程において”水素添加”を行っているからです。
簡単に言うと、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変えることで固形にするという工程です。
これによって、スーパーに並んでいるような固形のマーガリンが出来上がります。
その一方で、トランス脂肪酸が生成してしまいます。

マーガリンが危険と言われるのは、このトランス脂肪酸が原因です。
もう少し詳しく見てみましょう。

バターにも微量のトランス脂肪酸が含まれている

トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸に含まれます。
不飽和脂肪酸は構造の違いでシス型トランス型に分けられます。
同じ不飽和脂肪酸でも、これが違うだけで性質や体の中での動きが大きく異なるため、区別するためにトランス脂肪酸と呼ばれます。

トランス脂肪酸はマーガリンの製造以外に、植物油が作られるときにも生成します。
一方で、ウシやヤギの胃でも微生物によって作られます。
そのため、乳製品や牛脂などにもトランス脂肪酸は含まれるようです。
つまり、バターにも微量のトランス脂肪酸が含まれているのです。

トランス脂肪酸による体へのリスク

トランス脂肪酸は食品から摂る必要のない物質であると考えられています。
摂り過ぎによって、冠動脈疾患(虚血性心疾患)肥満などのリスクが上がることが懸念されています。
また、妊産婦においては、胎児の体重減少や流産、死産との関連が報告されています。
母親がトランス脂肪酸を過剰に摂取すると母乳に移行することも報告されています。
これらのことから、トランス脂肪酸は避けたほうが良い物質であると言えそうです。

マーガリンは食卓から排除すべきか?

ということは、やはりマーガリンは食卓から排除すべきなのでしょうか?
近年のトランス脂肪酸とマーガリン事情をお伝えします。

日本人のトランス脂肪酸摂取量

WHO(世界保健機構)はトランス脂肪酸摂取量の勧告(目標)基準をエネルギー比の1%としています。
日本人の平均値は0.31%基準を大きく下回っていると言われており、健康へのリスクは少ないと考えられます。

この数値が一体どれほどのマーガリン量に相当するのか、日本人の推定エネルギー必要量とマーガリンのトランス脂肪酸含有量を参考に、算出してみました。

毎朝トーストにマーガリンを塗って食べるならば、マーガリンを毎日10 g程度摂取していると考えられるので、日本人平均摂取量の数値でみると、大人はこのトースト1枚分ぐらいが目安と言えそうです。
子どもの場合、エネルギー必要量が少ないぶん、摂取できるマーガリンの量も少なくなります。

WHOの基準でみると日本人平均摂取量の約3倍量と考えられるので、普段あまり気にしなくてもクリア出来そうです。

※推定エネルギー必要量は個人の活動レベルによって異なりますが、今回は活動レベルⅠ(エネルギー必要量が低い人)を例にとって算出しています。

※食パンにもトランス脂肪酸は含まれますが、マーガリンと比較すると含有量が微量であるとみなし、今回はマーガリンのみの値を示しています。

トランス脂肪酸低減マーガリン

先ほど算出したマーガリン摂取量の目安は、食品安全委員会が2012年に報告したマーガリンの平均値を用いて算出しています。
近年では、トランス脂肪酸の含有量を低減させる努力をしているメーカーも多く、先ほど算出したマーガリン量は実際に摂取しても問題ない量よりも少なく見積もられている可能性があります。

また、トランス脂肪酸の含有量を低減させたものや、トランス脂肪酸フリーのマーガリンも販売されているようなので、そういったものを選んでいけば、トランス脂肪酸の摂取量を減らしていけると考えられます。

「マーガリンだからトランス脂肪酸がたくさん入ってて危険」とは言えない時代になっているのかもしれません。

結論:マーガリンは使う量と選び方が重要、トランス脂肪酸は控えめに

結論、「マーガリンだから」といって食卓から排除する必要はなさそうです。

もちろん、トランス脂肪酸はできるだけ摂らないに越したことはありません。
「マーガリンだからダメ」なのではなく、「トランス脂肪酸がたくさん入っているから注意が必要」ということを理解しておきましょう。

日常でのマーガリンとの付き合い方としては、トランス脂肪酸のことを気にせず購入したマーガリンであれば、1日あたりトースト1枚分ぐらいを目安にしておくと分かりやすいかもしれません。
トランス脂肪酸低減マーガリンやトランス脂肪酸フリーのマーガリンを選ぶのであれば、それほど気にせず食べても問題ないと思われます。

ちなみに、「家でトーストにマーガリンを塗って食べる」以外にも、市販のパンや焼き菓子に入っているマーガリンやショートニングにもトランス脂肪酸が入っています。
スーパーやコンビニでパンやお菓子を買うときには、裏に書いてある原材料も気にしてみると良いかもしれません。

気にせず食べても問題ないとはいえ、マーガリンは主に脂肪でできているため、過剰摂取は禁物。
「バランスのとれた食事の中に適量のマーガリン」というように、マーガリンとは上手に付き合っていくことをおすすめします。

〈参考文献〉
厚生労働省(2006)「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」,<http://www12.plala.or.jp/taacohya/Houki/KOSEIRODOU/2frame_Nyu_oyobi_Nyuseihin.htm>(参照2019-4-25)
食品安全委員会(2012)「新開発食品評価書 食品に含まれるトランス脂肪酸」,<https://www.fsc.go.jp/sonota/trans_fat/iinkai422_trans-sibosan_hyoka.pdf>(参照2019-4-25)
農林水産省(2013)「マーガリンの日本農林規格」, <http://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000099.html>(参照2019-4-25)
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表 14 油脂類」,<http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/02/16/1365343_1-0214r9.pdf>(参照2019-4-25)
菱田明・佐々木敏監修(2014)『日本人の食事摂取基準』第一出版.