「何を?」だけでなく「いつ?」食べるかも大切!「体内時計」を整えて仕事もプライベートも上々な新年度を迎えよう

私たちの体には「体内時計」が存在しています。
体内時計は時間の感覚を私達に教えてくれるだけでなく、睡眠や運動、体温などあらゆる生命活動を管理しています。

体内時計が整っていると健康的になり、仕事や運動などのパフォーマンスを上げてくれます。
その上、脂肪の蓄積も抑えられ、ダイエット効果も期待できます。

そんな体内時計は食事の内容だけでなく、タイミングなどにも影響されます。
体内時計を正常に保つ方法を知り、新年度によいスタートを切りましょう。

体内時計とは

体内時計の正体は時計遺伝子

私達の体は時計を見なくてもなんとなく朝、昼、晩を感じることができます。
これは、一定時間ごとに生命リズムを刻む体内時計が備わっているためです。
約24.5時間周期で変動するリズムをサーカディアンリズム(概日リズム)といい、それを時計遺伝子という遺伝子群がつかさどっています。
時計遺伝子により代謝や体温、ホルモン分泌、睡眠などが周期的に変化していく訳です。

体内のいたるところに時計遺伝子は存在しますが、脳の視床下部にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という部分に中心となる体内時計があります。
視交叉上核は両耳を直線で繋いだ中間あたりに存在し、約24.5時間周期で動きます。

体の1日と社会の1日にはズレがある

先ほど、中心となる体内時計が約24.5時間周期で動くことを説明しました。
ところが、社会は24時間周期で動くので、体と社会は毎日30分ずつズレが生じてしまいます。
つまり、約1か月で体は社会に対して半日遅れることになり、昼夜が逆転してしまうのです。

それでも私達が24時間の社会生活に毎日適応できているのは、光や食事、気温変動などで体内時計の周期がリセットされるためです。

体内時計が正常なことで得られる3つのいいこと

仕事や運動のパフォーマンスを上げられる

体内時計が正常だと、脳が活性化し頭がよく働くようになると考えられています。
「朝食」は体内時計を正常に動かす1つの要因です。
朝食摂取者と欠食者とで学力試験を行うと、朝食摂取者の方がよい結果を出している研究が複数存在しています。
また、運転シミュレーターを使用した交通事故率も朝食を摂取している人の方が低いという結果が出ています。

ダイエットになる

体内時計は脂質の代謝に関係していると考えられています。
体内時計が上手く機能していないと、上昇した血糖値を下げる機能が上手く働かず、糖の代謝が減少します。
そうするとエネルギーの代謝が減少し肥満に繋がることがあります。

今日の日本人の摂取カロリーは餓死者が出た戦後直後の水準よりも減少傾向にあります。
それでもメタボリックシンドロームや肥満が問題になっているのは、体内時計が関係していると指摘する論文も存在します。
つまり、体内時計が乱れている人は体内時計を正常にするだけでダイエットできる可能性があると考えられます。

健康寿命が延びる

体内時計が正常だと、活性酸素の産生が抑えられます。
活性酸素は体を老けさせ、高血圧や高血糖を引き起こす物質。
体内時計を正常にすることで、高血圧症や糖尿病といった生活習慣病にかかるリスクを下げることができます。

また、生物の染色体の末端には「テロメア」という寿命に関係する部分が存在します。
体内時計が正常であることによってテロメアの短縮を遅くでき、健康寿命を延ばせると考えられています。

体内時計には光と食事が大切

光と食事が体内時計と社会の時計を連動させる

体内時計の補正は光を中心に食事や気温変動などによって行われます。
体内時計の中心となる視交叉上核は目から受け取った光の情報を受け取り、脳にある「松果体(しょうかたい)」へ伝えられます。
情報を受け取った松果体は「メラトニン」というホルモンの分泌を調節します。
光が減少してメラトニン分泌が増加すると人は眠り、光が増加してメラトニン分泌が減少すると覚醒します。

また、食事によって「コルチゾール」というホルモンが分泌されることもサーカディアンリズムの形成につながります。
これらによって24.5時間の体内時計が補正され、24時間の社会の時計に適応するようになるのです。

早寝早起きが体内時計を正常化する

社会の時計は太陽の光を基準にできています。
明るい時間帯は活動し、暗い時間は体を休めるというリズムをもつのが体内時計の正常化につながります。

電気のなかった時代は自然と太陽の光に応じた生活となって体内時計が整いますが、電気のおかげでいつでも活動できるようになった現代は、早寝早起きによって自ら体内時計を朝型にする必要があります。
休日でも23時くらいまでには寝て、お昼まで眠り続けることのないようにしましょう。

スマートフォンやテレビなどから発せられる光は睡眠を誘導するホルモンであるメラトニンの分泌を減少させるので、寝る前は避けた方がよさそうです。

朝食と夕食が体内時計を整える

朝食が体内時計を整えるのに最重要

体内時計を整えるのに最も重要な食事は朝食だと考えられています。
朝食によって、バラバラだった体中の時計遺伝子が同調して脳の活性化や筋肉の合成が行われるためです。

特にごはんやパンのような炭水化物や魚の脂質が体を「朝だ」と認識させるのに特に有効だという研究結果が出ています。
こうした食材を中心に野菜や果物を合わせると体が上手く機能するといえそうです。
ごはん、焼き魚、味噌汁のような伝統的な日本の朝食は三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)やビタミン・ミネラルを含み、理想的だと考えられます。
忙しい人はおかかのおにぎりやツナサンドにカットフルーツなどを取り入れるといいかもしれません。

夕食は早めの時間に腹八分目

朝食が体内時計調整に効果を出すために、夕食の食べ方が重要なポイントになります。

まずは食べる時間。

夕食から次の日の朝食まで最低10時間空けると体内時計の調整に有効です。
朝型生活を送ることを考慮すると20時までに食べるのが理想的です。
また、夜はエネルギーの消費が少ないため、食べる量を少なめにするのも大切です。
1日に同じカロリーを摂取していても、夜にたくさん食べてしまうと脂肪の蓄積が多くなってしまいます。

さらに、夕食を腹八分目にすることで朝に食欲がなかった人もおなかがすくようになり、朝食を食べられるようになると考えられます。
仕事でなかなか早い時間に夕食を食べられない人は2回に分けて夕食を食べるのが良いかもしれません。
仕事中には主食を摂り、帰宅後は野菜や肉などのおかずを食べると、炭水化物が仕事のエネルギーとなると共に、栄養バランスアップを狙えます。

夜食は体内時計的にもダイエット的にもNG

前述のとおり、夜から朝までの絶食の時間が体内時計の調整に必要となること、朝に空腹感を得られなくなることから夜食は避けるべきでしょう。

他にも、夜食はダイエットにも大敵です。これは、「食事誘発性熱産生」を減少させてしまうことにあります。
「食事誘発性熱産生」とは、食後に体の熱としてエネルギーが消費されること。
通常は摂取カロリーの約10%も熱として消費されますが、寝る直前の食事はエネルギーがあまり消費されず、余分なエネルギーは脂肪として蓄積されてしまいます。

さらに、深夜は脂肪分の多い物を好む傾向があることも問題です。
これはマウスに対する実験ですが、昼よりも夜の方が高脂肪の食べ物を長時間食べ続ける傾向があるという研究報告があります。

まとめ

生物の体には時計遺伝子が存在し、体内時計をコントロールしています。
体内時計は24.5時間周期で、社会の24時間周期とズレが生じています。
そのズレを調整し、体内時計が社会の時計と上手く連動すると体調がよくなり、仕事や運動のパフォーマンス向上、ダイエットや健康寿命の延伸などが期待できるようになります。

体内時計を整えるのに大切な要素は光や食事です。
生活は太陽の光と同じように早寝早起きをし、23時までに寝るのがおすすめです。
食事では、特に朝食が大切。炭水化物や魚を中心に野菜なども合わせてバランスの良いものにしましょう。
朝食が効果を発揮するためにも夕食は20時までに腹八分目で済ませると良いでしょう。
仕事で難しい人は仕事中に主食、帰宅後におかず、というような食べ方でもOKです。
夜食は体内時計正常かの敵になるだけでなく脂肪蓄積にも繋がるので避けましょう。

毎日体内時計に優しい生活をするのは難しいかもしれません。
まずは「1週間のうち何日」といった目標をたてて実行してみてはいかがでしょうか。

参考文献

香川靖雄(2016)「健康寿命を延ばす時間栄養学」保健の科学
香川靖雄(2010)「時間栄養学 時計遺伝子と食事のリズム」女子栄養大学出版部
柴田重信(2012)「時間栄養学」化学と生物
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社
古谷彰子(2014)「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」ディスカヴァー・トゥエンティワン

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