栄養状態が睡眠の長さに関係する?期待できる栄養素とは

栄養状態と睡眠に相関あり、ビタミンDとビタミンB12に注目

睡眠の長さと栄養状態の関連が報告されています[1]。
報告によると、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量と睡眠の長さに相関があることが示唆されています。
報告の内容と、関連栄養素(ビタミンD、ビタミンB12)を摂るためのポイントをご紹介します。 

睡眠時間と栄養摂取量を調べた報告

~以下引用~
この研究は、30歳から69歳の1,902人の健康な日本人の成人(エネルギー摂取量が725kcal/日以上~3235kcal/日以下)を対象に、睡眠時間と食事による栄養摂取の関連を調査したものである。簡単な自己管理の食事歴アンケート(BDHQ)と日本版ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)を含むアンケート調査を実施した。
男性(1029名)において、(1)睡眠中間点の調整後、睡眠時間とタンパク質からのエネルギーの割合の間にわずかながら有意な相関関係があり、(2)エネルギー調整後のナトリウム、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量も睡眠時間と有意に相関していた。(3)パン、豆類、魚介類の摂取と睡眠時間に相関があった。
一方で女性(873名)では、睡眠時間と食事摂取量の間に有意な相関は見られなかった。
~引用終わり~ 

この報告によると、男性において、ナトリウム、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が多いと睡眠時間が長いという相関が見られています。
ナトリウムについては過剰摂取にならないように気を付ける必要がありますが、ビタミンDやビタミンB12を摂取することが、よく眠れることにつながるのかもしれません。
睡眠も栄養状態が良いと質が良いのでしょうね。栄養状態が良いという評価の指標が、この報告のような食事評価だけでなく、尿分析などの生体指標も加味した評価を行うと、より栄養状態の評価の質が高くなります。 

摂取基準と摂取するときのポイント

ビタミンD

日本人の食事摂取基準[2]によると、ビタミンDの目安量は成人で8.5 µg/日と策定されています。
また、耐容上限量が100 µg/日と策定されており、サプリメントからの多量摂取をつづけると高カルシウム血症、腎障害、軟組織の石灰化障害などが起こるため注意が必要です。
なお、紫外線による皮膚での産生は調節されており、必要以上のビタミン D は産生されないため、日照によるビタミン D 過剰症は起こりません。 

ビタミンDを含む食品は少なく、主に魚肉に限られます。
サケ(紅鮭、しろ鮭)は1切れ(80 g)あたりのビタミンDが25 µg程度と非常に多く含まれています[3]。

なお、人でも、皮膚に存在するプロビタミンD(7-デヒドロコレステロール)が日光の紫外線によりプレビタミンDとなり、体温による熱異性化によりビタミンDが生成します。
5.5 μgのビタミンDを作るのに必要な日射量は、顔面と手の甲の面積の皮膚で、つくばあたりの緯度で夏の正午であれば3.5分程度で、札幌あたりの緯度で冬の正午であれば76分程度で合成可能という報告があります[2]。
緯度と季節でずいぶんビタミンDの合成量は異なるので、食事による供給は大切です。
魚類が苦手な人にはビタミンDサプリメントがお薦めです。 

ビタミンB12

「日本人の食事摂取基準」におけるビタミンB12の推奨量は2.4 µg/日です(成人男女)。
これは血清ビタミンB12濃度を適正に維持する(100 pmol/L以上 ≒135 pg/mL以上)ために必要な摂取量をもとに算定し、策定された数値です[2]。
ヒトには、ビタミンB12を必要とする酵素が二つありますが、これら二つの酵素活性を十分に発揮させることができるビタミンB12摂取量を考慮して、必要量を算定するという考え方が、「日本人の食事摂取基準2020年版」[2]のビタミンB12の項の「今後の課題」に記載されています。5µg/日程度摂取した方が良いのかもしれません。

ビタミンB12はあさりなどの貝類やさばなどの魚介類、レバーなどに豊富に含まれます[3]。一度の食事で吸収できる飽和量は2.0 µgと推定されており[2]、一度に多量のビタミンB12を含む食事を摂るより三度の食事でこまめに摂取するのが効果的です。 

引用文献

[1] Komada Y, Narisawa H et al. Relationship between Self-Reported Dietary Nutrient Intake and Self-Reported Sleep Duration among Japanese Adults. 2017; 9(2): 134. 

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)

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