妊娠期間中にはビタミンB1、ビタミンB2も必要量が増加
妊娠期間中、体内の栄養状態を正常に保つためにはすべての栄養素の必要量が増加します。
葉酸や鉄についてはすでに周知されていますが、ビタミンB1、ビタミンB2も妊娠中に気を配りたい栄養素です。
今回はビタミンB1、ビタミンB2の必要量が増加する理由と摂取のポイントをご紹介します。
妊娠期間中は体重増加に伴いエネルギーの必要量が増える
日本人の食事摂取基準[2]では、妊婦の推定エネルギー必要量を、妊娠期のエネルギー消費量とエネルギー蓄積量を鑑みて策定されています。
根拠となった報告[1]を抜粋してご紹介します。
~以下引用~
この報告は、妊娠期間中のエネルギー必要量を推定するために行われた実験結果である。健康な妊婦をBMI(Body mass index =)体格指数,単位はkg/m2)により三群(19.8未満の低BMI群(17名)、19.8~26.0の通常BMI群(34名)、26.0以上の高BMI群)(12名))に分けてエネルギー必要量を推定した。
基礎代謝量は妊娠中10.7 ±5.4 kcal/週と増加した。また、総エネルギー消費量は5.2 ±12.8 kcal/週 と増加した。一方で、妊娠期間中には身体活動エネルギー量の減少が認められた。妊娠期間中の脂肪蓄積量がBMIによって異なり、低BMI群では5.3 g/kg 体重、通常BMI群では4.6 g/kg 体重、高BMI群では8.4 g/kg体重であった。妊娠期間中のタンパク質蓄積量はBMIによって変わらなかった。したがって、妊娠期間中に蓄積されたエネルギーの質は妊婦のBMIによって異なることが分かった。
結論、健康な妊娠女性は体重増加と基礎代謝の増大に適応するために追加のエネルギー摂取が必要であり、活動エネルギー消費量の減少で相殺されるものではない。
~引用終わり~
日本人の食事摂取基準[2]では、この報告を含む複数の報告から、妊娠前の総エネルギー消費量に対する妊娠期間中の増加分は体重増加率とほぼ一致するとし、妊婦の最終体重増加量 11 kgに対応させて補正した以下の付加量が必要としています。
(初期)+19 kcal/日 (中期)+77 kcal/日 (後期)+285 kcal/日
また、複数の報告から得られた蓄積量より、同じく体重増加量に対応させて、以下の付加量が必要としています。
(初期)+44 kcal/日 (中期)+167 kcal/日 (後期)+170 kcal/日
これらを足し合わせて、50 kcal単位に数値をまるめて、以下の数値を妊娠期のエネルギー付加量としています。
(初期)+50 kcal/日 (中期)+250 kcal/日 (後期)+450 kcal/日
必要なエネルギー量とビタミン量の関係
必要なエネルギー量が増えるということは、エネルギー代謝に必要になるビタミンも必要量が増えます。
日本人の食事摂取基準においても、ビタミンB1は+0.2 mg/日、ビタミンB2は+0.3 mg/日の推奨量が策定されています。
妊娠期は、より必要になるエネルギーの摂取と併せて、これらのビタミンも充分に摂ることが必要です。
ビタミンB1とビタミンB2の必要量の概数は、各々、0.55 mg/1,000 kcalと0.60 mg/1,000 kcalと覚えておけば、非妊娠時でも妊娠時でも、さらに運動量が増した時でも、容易にビタミンB1とビタミンB2の必要量を計算することができます。
ビタミンB1、ビタミンB2、摂取のポイント
ビタミンB1は豚肉やうなぎ,玄米などに多く含まれています。
特に豚肉では,豚ヒレ100 gに1.32 mgのビタミンB1が含まれています[3]。
また,ビタミンB1は,代謝回転が他のビタミンと比べて特に高いので,毎日継続的に摂取することが必要です。
そのため,摂取カロリーを増やさずにビタミンB1を補充したいときは食品サプリメントあるいは第3類医薬品であるビタミン剤を活用することがおすすめです。
ビタミンB2は、レバーや肉類、魚介類、牛乳、卵などに多く含まれます[3]。
魚肉ソーセージ1本に0.54 mg、牛乳1杯で0.35 mg、鶏卵1個に0.24 mgのビタミンB2が含まれおり、これらを日々の食事にプラスすることでビタミンB2を補うことが出来そうです。
また、手軽に補うためにはサプリメントを活用するのもよいでしょう。
なお、野菜類、果物類には、ビタミンB1やビタミンB2などのB群ビタミンは、ほとんど含まれていないので注意しましょう。
引用文献
[1] Nancy F Butte, William W Wong et al. Energy requirements during pregnancy based on total energy expenditure and energy deposition. The American Journal of Clinical Nutrition. 2004; 79(6):1078-87
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-07-30)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)