カルシウム補給が生理痛を緩和する?

カルシウムの補給が月経困難症(生理痛)におよぼす影響

イランのタブリズ医科大学のZareiらによって、カルシウムを補うことが月経困難症の緩和に有効であると報告されています[1]。

~以下引用~
この研究は、原発性月経困難症に対するカルシウムの効果およびカルシウムとビタミンDの併用効果を調べることを目的に、中度~重度の原発性月経困難症の学生85人を対象に無作為化二重盲検試験を行ったものである。被験者を無作為に3群に分け、①1000 mgカルシウム+ 5000 IUビタミンD3、②1000 mgカルシウム、③プラセボのいずれかを月経周期15日目から次の周期の月経がなくなるまで、3周期にわたって服用させた。
その結果、平均疼痛強度はプラセボ群と比較して、カルシウム摂取群、カルシウム+ビタミンD摂取群ともに減少し、カルシウム摂取群においてのみ統計的に有意であった。このことより、カルシウムの補給は月経困難症に有益であるが、ビタミンDを併用する必要はないといえる。
~引用終わり~ 

月経困難症とはいわゆる生理痛のことであり、月経時に下腹部痛、腰痛などの痛みが見られる症状を指します。
原発性月経困難症とは、子宮や卵巣に特別な病気がないのに症状が現れるものです。
この報告によれば、カルシウムを適切に補うことで月経時の痛みを緩和することができると言えるかもしれません。 

日本人女性のカルシウム摂取状況

日本人の食事摂取基準[3]によるカルシウムの推奨量は、15~74歳女性において650 mg/日と策定されています。
一方、国民健康・栄養調査(平成30年)[4]によると、平均的に月経があると言われる15~50歳の摂取量は380~490 mg程度にとどまっており、カルシウム不足の人が多いことが推察されます。
生理痛にお悩みの方は、カルシウムを十分に摂れているか、食生活を見直してみるのも良いかもしれません。 

カルシウム摂取のポイント、サプリメントも上手に活用して

カルシウムは、乳製品や小魚、大豆製品などに多く、牛乳には100 mLあたり110 mg程度のカルシウムが含まれています[5]。
カルシウムを補うために、まずはコップ1杯の牛乳から始めてみても良いかもしれません。食品で補いきれないときには、サプリメントを活用するのも有効です。
カルシウム摂取の耐容上限量は2500 mg/日ですが、栄養機能食品の表示がなされているサプリメントは1日の摂取量が300〜600 mgになるように設計されていますので過剰摂取につながる心配はありません。

おわりに

イラン人は欧米人と同様に1000 mg/日近いカルシウムを摂取しています。
したがって、紹介した研究では対象者のカルシウム摂取量が2000 mg/日近くに達していたと推定できます。
日本人がこのような大量のカルシウム摂取を実現するには栄養機能食品で認められている量以上のカルシウムをサプリメントから摂取しなければなりません。
しかし、日常の食事からの摂取量(500 mg/日弱)の3倍(約1500 mg/日)ものカルシウムを摂取することには慎重であるべきです。

生理痛の症状緩和のためには、カルシウムを豊富に含む食品やサプリメントを活用して、まず食事摂取基準の推奨量を充足させることから始めるべきでしょう。

引用文献

[1] Somayeh Zarei, Sakineh Mohammad-Alizadeh-Charandabi et al. Effects of Calcium-Vitamin D and Calcium-Alone on Pain Intensity and Menstrual Blood Loss in Women With Primary Dysmenorrhea: A Randomized Controlled Trial. Pain Medicine. 2017; 18: 3–13

参考文献

[2] QLife「月経困難症とは」, <https://www.qlife.jp/dictionary/item/i_030733000/>(参照2020-05-26)
[3] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-05-26)
[4] 厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成30年)」,<https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html>(参照2020-05-01)
[5] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-05-26)

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