マンガン摂取と2型糖尿病の発症リスクに関する報告
中国のハルビン医科大学のShanshanらにより、マンガン摂取量の増加が2型糖尿病発症のリスクを下げることが報告されています[1]。
~以下引用~
この論文は、食事からのマンガン摂取が2型糖尿病の発症に独立して関連するかを調べることを目的に、20~74歳の中国人10,483人を対象にして、マンガン摂取と2型糖尿病発症率またはHbA1c濃度との関連を調べた2つのコホート研究をまとめたものである。
結果、マンガン摂取量によって対象者を3つのグループに分け2型糖尿病の発症リスクを比較したところ、一方のコホート研究(対象者全体のマンガン摂取量、4.58±1.04 mg/日)では、マンガン摂取量が多い(4.91 mg/日以上)グループは摂取量が少ない(4.22 mg/日未満)グループと比較して発症リスクが0.52倍に低下していた。同様の結果は、もう一方の研究(マンガン摂取量、4.61 ±1.08 mg/日)からも得られた。
~引用終わり~
この報告では、マンガン摂取量と2型糖尿病発症リスクの関連を調べるにあたり、エネルギー、炭水化物、脂質、抗酸化性物質などの摂取量の影響を調整しており、マンガンが他の食事因子とは無関係に2型糖尿病発症リスクを低下させたという主張は統計的には間違いはありません。
ただし、マンガンは穀物などの植物性食品に多く含まれるため、この2つの研究における、マンガン摂取量のもっとも多い群は、最も少ない群と比較してコメの摂取量が2倍近く多く、逆に畜産物の摂取が半分以下となっています。
すなわち、マンガン摂取量の最も多い群はアジア型の食事、最も少ない群は西洋型の食事とみなすことができます。
このような食事構成に大きな違いが存在する場合に、マンガン以外の食事因子の影響が本当に除けているのか疑問があり、マンガン摂取と2型糖尿病発症との関連については慎重に判断すべきです。
日本におけるマンガンの摂取状況
マンガンの必要量は明らかにされていませんが、約2 mg/日程度と考えられています。
日本人の食事摂取基準では、マンガンの摂取目安量を日本人の平均的なマンガン摂取量にもとづいて成人男性で4.0 mg/日、成人女性で3.5 mg/日としています[2]。
この値は欧米で策定されている摂取目安量(約2.5 mg/日)を大きく上回るものであり、日本人の多くはマンガンを十二分に摂取しているといえます。
マンガン摂取のポイントは
マンガンは植物性の食品に多く含まれており、緑茶の浸出液にも100 mLあたり約0.3 mg含まれています[3]。
植物性食品の摂取が少ない人は、ペットボトル1本(500 mL)程度の緑茶を飲用することでマンガン摂取を補うことができるでしょう。
なお、厳格な菜食ではマンガン摂取が10 mg/日近くに及ぶことがあるので過剰摂取に注意する必要があります。
おわりに
紹介した論文はマンガン含有量の多い食事が2型糖尿病発症リスクを低下させることを示していますが、これは穀物や野菜を中心とした食事全体の効果であると解釈すべきです。
特定の栄養素や食事成分に着目するのではなく、主食と副食のバランスがとれた日本型食生活の長所を再認識することが必要でしょう。
引用文献
[1] Shanshan Du, Xiaoyan Wu et al. Dietary Manganese and Type 2 Diabetes Mellitus: Two Prospective Cohort Studies in China. Diabetologia. 2018; 61(9):1985-1995
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)