マグネシウム摂取と膵臓がん発生率に関する報告
米国インディアナ大学のDibabaらの研究において、マグネシウムの十分な摂取が膵臓がんの発生率を低下させることが報告されています[1]。
~以下引用~
Dibabaらは、ワシントン州西部の50~76歳の男女66,806人を対象にして前向きコホート研究を行った。食事摂取量とサプリメントの使用量を調査して、マグネシウムを含む栄養素の摂取量を算出し、6年間の追跡を行った。マグネシウム摂取量をもとに3グループに分けて膵臓がん発生リスクを比較するとともに、マグネシウム摂取量100 mgごとの膵臓がん発生のハザード比を算出した。
その結果、マグネシウム摂取量がアメリカにおける推奨量(男性420 mg/日、女性320 mg/日)に対して75%未満の者は100%満たしている者と比べて、膵臓がんの発生リスクが1.76倍であった。また、摂取量に応じたハザード比の分析では、マグネシウム摂取量が1日100 mg減少するごとに、膵臓がんの発生率が24%上昇した。
なお、対象者の中でマグネシウム摂取量が推奨量に対して75%未満の者は、男性、非白人、喫煙量が多く、太りすぎ、糖尿病患者の中に多かった。
~引用終わり~
アメリカの食生活は日本とは相当に異なっており、この結果を日本人にそのまま当てはめることには慎重でなければいけませんが、この報告はマグネシウムの十分な摂取が膵臓がんの予防につながることを示しているのかもしれません。
日本におけるマグネシウム摂取量
日本においては、成人男性で320~370 mg/日、成人女性で270~290 mg/日がマグネシウム摂取の推奨量として設定されています[2]。
一方で、厚生労働省が平成29年に行った国民健康・栄養調査によると、日本人のマグネシウム摂取量平均値は成人男性で261 mg/日、成人女性で236 mg/日であり[3]、推奨量を満たしていない人が多いことが推察されます。
しかし、サプリメントからの多量摂取は下痢を引き起こす可能性があるため、サプリメントからの摂取量には耐容上限量が設けられており(成人の場合350 mg/日、小児では5 mg/kg体重/日)[2]、サプリメントによってマグネシウムの摂取量を増やすことには注意が必要です。
マグネシウムを補うために日々の食事にプラスしたい食品
マグネシウムを比較的多く(100 gあたり50 mg以上)含む食品には、ほうれんそう、木綿豆腐、水戻しわかめなどがあります[4]。
また、一般に魚介類は肉類よりも多くのマグネシウムを含んでいます。さらに日常的に大量に食べるものではありませんが、アーモンドなどのナッツ類や焼きのりは100 gあたりで300 mg程度のマグネシウムを含んでいます。
文部科学省が出す「食品成分データベース」[4]を参考にしながら、日常の食品の中でマグネシウムを多く含んでいるものを意識して献立を組み立てることから始めてみると良いでしょう。
おわりに
マグネシウムを不足させないことは膵臓がんの予防につながるかもしれません。豊富に含む食品を活用することや、副作用を理解した上で適量をサプリメントで補うことがポイントになりそうです。
引用文献
[1] Daniel Dibaba, Pengcheng Xun, Kuninobu Yokota et al. Magnesium intake and incidence of pancreatic cancer: the VITamins and Lifestyle study. Br J Cancer 2015; 113: 1615–1621.
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」,< https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html>(参照2020-03-04)
[4] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)