減塩だけじゃない!マグネシウムを摂って高血圧予防

高血圧予防にはマグネシウムが関係するかも

塩分摂取が高血圧につながるのはよく知られていますが、マグネシウムと高血圧の関連が報告されています[1]。
報告の内容と、マグネシウムの摂取基準および摂取のポイントをご紹介します。 

マグネシウムと心臓病、高血圧、2型糖尿病に関する報告

中国、上海交通大学のWuらによって、血清マグネシウム濃度で示される循環血中のマグネシウム濃度が心臓病、高血圧、および2型糖尿病の発症率に関係することが報告されています[1]。

~以下引用~
この研究は、冠状動脈性心臓病(CHD)、高血圧、および2型糖尿病(T2DM)の発症率と血清マグネシウム濃度の関係を調べることを目的に、11件のコホート研究についてメタ分析を行ったものである。
11件のコホート研究のうち、5件がCHD(38,808名、4,437例、平均10.5年の追跡期間)、3件が高血圧(14,876名、3,149例、6.7年の追跡期間)、4件がT2DM(31,284名、2,680例、8.8年の追跡期間)を対象としていた。血清マグネシウム濃度のもっとも高い群のもっとも低い群に対するプールされた相対リスクは、CHD、高血圧、T2DMでそれぞれ0.86、0.91、0.64であった。また、血清マグネシウム濃度が0.1 mmol / L増加するごとに、高血圧の発生率が4%減少したが、CHD、T2DMの発生率とは直線的な相関は見られなかった。
このメタ分析の結果は、血清マグネシウム濃度がCHD、高血圧、およびT2DMの発症率と反比例することを示唆している。ただし、血清マグネシウム濃度の最適範囲を求めるためには追加の研究が必要であるとしている。
~引用終わり~ 

マグネシウムの摂取基準と摂取のポイント

血清マグネシウム濃度はマグネシウム摂取量を含む様々な要因の影響を受けて変動します。
したがって、紹介した研究から短絡的にマグネシウムを多く摂取すればCHD、高血圧、T2DMの予防につながると結論することはできません。
また、この研究が解析対象とした元の研究は、いずれも食事内容についてふれていません。
マグネシウムの摂取増がCHDなどの疾患の発症リスクを低くするとしても、それは「マグネシウムの摂取量が多くなる献立」の効果である可能性があります。 

日本においては、成人男性で320~370 mg/日、成人女性で270~290 mg/日がマグネシウム摂取の推奨量として設定されています[2]。
一方、平成30年度国民健康・栄養調査における成人のマグネシウム摂取量の平均値は男性290 mg/日、女性258 mg/日であり、推奨量には届いていません。
しかし、サプリメントからの多量摂取は下痢を起こす可能性があるため、サプリメントからの摂取量には耐容上限量が設けられており(成人の場合350 mg/日、小児では5 mg/kg体重/日)[2]、サプリメントによってマグネシウムの摂取量だけを増やすことは勧められません。

マグネシウムを比較的多く(100 gあたり50 mg以上)含む食品には、ほうれんそう、木綿豆腐、水戻しわかめなどがあります[3]。
また、一般に魚介類は肉類よりも多くのマグネシウムを含んでいます。
さらに日常的に大量に食べるものではありませんが、アーモンドなどのナッツ類や焼きのりは100 gあたりで300 mg程度のマグネシウムを含んでいます。
文部科学省が出す「食品成分データベース」[3]を参考にしながら、日常の食品の中でマグネシウムを多く含んでいるものを意識して献立を組み立てることでマグネシウム摂取量を増やすようにしましょう。 

引用文献

[1] Wu J, Xun P et al. Circulating magnesium levels and incidence of coronary heart diseases, hypertension, and type 2 diabetes mellitus: a meta-analysis of prospective cohort studies.

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)

著者 / 監修者