加齢性難聴にならないために摂るべき栄養素は

栄養素の摂取と加齢性難聴に関する報告

韓国、江原道国立大学のKimらによって、ビタミンB2(リボフラビン)、ナイアシン、ビタミンA(レチノール)の摂取量が加齢性難聴と関連することが報告されています[1]。
この報告は、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンAの摂取量が少ないと加齢性難聴のリスクが高くなる可能性を示唆しています。 

~以下引用~
この研究は、2010年から2012年まで65歳以上の4,742人の「第5回韓国国民健康および栄養検査調査」のデータを使用して、加齢性難聴に対する栄養素摂取量の影響の可能性を調査したものである。耳鼻科検査と聴覚検査、栄養素摂取量の結果を、BMI、喫煙状況、アルコール消費、高血圧や糖尿病の病歴などの交絡因子を調整した回帰モデルから分析した。
分析の結果、リボフラビン、ナイアシン、レチノールの高摂取群は低摂取群と比べて両側性聴覚障害の有病率が低かった。リボフラビン1.14 mg以上摂取群は0.50 mg未満摂取群の0.71倍、ナイアシン16.36 mg以上摂取群は8.26 mg未満摂取群の0.72倍、レチノール60.56 µg摂取群は3.22 µg未満摂取群の0.66倍の有病率であった。
~引用終わり~ 

日本における摂取基準と摂取するためのポイント

ビタミンB2

日本人の食事摂取基準[2]による推奨量は、50~74歳男性で1.5 mg/日、女性で1.2 mg/日と策定されています。

ビタミンB2は、レバーや肉類、魚介類、牛乳、卵などに多く含まれます[3]。
魚肉ソーセージ1本に0.54 mg、牛乳1杯で0.35 mg、鶏卵1個に0.24 mgのビタミンB2が含まれており、これらを日々の食事にプラスすることでビタミンB2を摂ることができます。
また、日々の栄養素摂取量を考えて、サプリメントを活用するのも賢い選択の一つだと思います。 

ナイアシン

ナイアシン活性を有する主要な化合物は、ニコチン酸、ニコチンアミド、トリプトファンで、日本人の食事摂取基準[2]では、これらのナイアシン当量(niacin equivalent:NE)で基準を設けています。
推奨量は、50~74歳男性で14 mgNE/日、女性で11 mgNE/日と策定されています。 

ナイアシンは、肉(鶏むね肉)や魚(かつおやまぐろといった赤身魚)、玄米などに多く、かつお100 gには23~24 mgNE、鶏むね肉100 gには15.4 mgNE、玄米150 gには5.4 mgNEが含まれます[3]。 

ビタミンA(レチノール)

日本人の食事摂取基準[2]による推奨量は、50~74歳男性で850~900 µgRAE/日、女性で700 µgRAE/日と策定されています。RAEとはretinol activity equivalent(レチノール活性当量)の略です。

ビタミンA(レチノール)活性を持つものには、レチノールの他にβカロテンなどのプロビタミンAカロテノイドが知られています。βカロテンは重量比でレチノールの1/12のビタミンA活性があります。
レバーやうなぎ、緑黄色野菜、かんきつ類などに多く含まれています[3]。
鶏レバー100 gにレチノールが14,000 µg、うなぎ100 gにレチノールが2,400 µg、モロヘイヤ100 gにβカロテンが10,000 µgと特に多くのビタミンA活性物質が含まれており、これらの摂取でビタミンAを摂ることができます。

ただし、過剰摂取による健康障害が報告されていることから、耐容上限量が2,700 µg/日と策定されており、摂り過ぎにも注意が必要です。ただし、βカロテンなどのプロビタミンAカロテノイドは含みません。レチノールを習慣的に2,700 µg/日以上摂り続けると過剰摂取による健康障害のリスクが高まりますよ、という意味です。 

おわりに

耳が聞こえづらくなるのには、長年の栄養状態が関係しているかもしれません。
特に、ビタミンB2やナイアシン、ビタミンAの不足には気を付けておくとよいでしょう。
定期的に、尿や血液といった生体試料中のこれらの含量を測定してもらい、管理栄養士の指導を受けると良いと思います。 

引用文献

[1] Kim TS, Chung JW. Associations of Dietary Riboflavin, Niacin, and Retinol With Age-related Hearing Loss: An Analysis of Korean National Health and Nutrition Examination Survey Data. Nutrients. 2019; 11(4):896.

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-07-03)

著者 / 監修者