お茶、ヨーグルト、ソーセージなど、トクホ(=特定保健用食品)が人気を集めています。
トクホの製品のみならず健康食品は「食べるだけ」「飲むだけ」で健康を手に入れられそうな気がしてしまいます。
今回は、健康食品が本当に健康をもたらしてくれるのか、健康食品との付き合い方のヒントを解説していきます。
健康食品ってそもそもどういうもの?
「健康食品」の厳密な定義はない
食品には「栄養性」「嗜好性」「機能性」という大きく3つの機能があります。
「栄養性」は生命を維持するための機能、「嗜好性」は食品の味や香りといったおいしさの感覚を与える機能、「機能性」は体の調子を整え、病気を予防する機能です。
この3つの機能のうち「機能性」に注目されて市販されているのがいわゆる「健康食品」です。
食品のもつ機能性は全て解明されている訳ではなく、成分がはっきり特定できていないもの、健康効果が証明できていないものなど数多く存在します。
一方で、成分が解明されたり、臨床試験で効果が証明されたりして機能性が確認された成分も存在します。
「健康食品」には法律上の定義がないので、健康効果が解明されているもの、されていないもの、はたまた効果がないかもしれないものが混在してしまうという訳です。
そこで、国は消費者が正しく情報を得られるよう、「保健機能食品」という分野を作りました。
保健機能食品にはおなじみのトクホ(特定保健用食品)、機能性表示食品、栄養機能食品の3種類があります。
トクホ(特定保健用食品)
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」などの表示許可やおなじみの認可マークのがある食品です。
表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。
栄養機能食品
ビタミンやミネラルなど、一日に必要な栄養成分が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品です。
すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、特に届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能性を表示することができます。
機能性表示食品
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。
販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。
ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。
事業者から届け出られた内容は、消費者庁のウェブサイトで公開され、商品の安全性や機能性がどのように確保されているのかなどといった商品情報を確認できます。
健康食品に本当に効果がある?
どんな成分が健康食品になっているの?
表に健康食品に使われる素材や成分を示しました。
こうした食品成分をもとに健康食品はその効果を「売り」にしています。
とくにトクホについては、パッケージへの表記が細かく規定されています。
例えば、オオバコの一種であるサイリウム種皮は食物繊維を多く含みます。
これを使用した食品がトクホとして許可されると、「お腹の調子を整える」や「コレステロールが高めの方へ」といった文言を記載できるようになります。
不摂生を帳消しにはしてくれない
健康食品を摂っていさえすれれば、あとはどんな脂っこいものを食べても、食べすぎても大丈夫と思われる方もいるかもしれませんが、残念ながら健康食品には劇的に健康を改善する効果があるとは言い切れません。
健康食品の効果が国によって審査されているトクホであっても、「健康を維持・増進する際に手助けとなるもの」というスタンス。
つまり、食や運動を含めた生活習慣の改善によって、表記されている効果が期待できるというわけです。
トクホ以外の健康食品は?
トクホについては安全性と健康増進に役立つ効果が国によって審査されているので比較的信頼性が高いといえそうです。
他の健康食品はどうでしょうか。
まずトクホと同じ保健機能食品について考えていきます。
栄養機能食品にはすでに科学的根拠が確認された栄養成分が使われています。
例えば野菜や果物があまり食べられなかった日にビタミンCを補給する栄養機能食品を摂ると不足が補えそうです。
機能性表示食品については、販売する会社の責任で科学的根拠に基づき安全性や機能性を確認しています。
届出の内容は誰でも消費者庁のウェブサイトで確認できますので、不安のある場合は調べてみると良いでしょう。
保健機能食品に含まれない「健康食品」の中には保健機能食品としての規格を満たしていても届出や認証作業を行っていないものから、十分な根拠が集められていないもの、実際になんの効果のないものまで含まれると考えられます。
CMや謳い文句に惑わされず、自分の健康維持・増進に本当に必要かどうか考えて購入しましょう。
異変を感じた場合は使用を中止しましょう。
健康食品を選ぶときのポイント
成分量の表記のない製品の信頼度は低め
栄養摂取は少なすぎも多すぎも体に悪影響を与えることがあります。
そのため、健康食品の有効性や安全性の判断には量の情報が重要。
トクホを中心とした機能性表示食品は成分量の表示が義務付けられていますが、それ以外の健康食品には成分量が表示されていない製品もあります。
成分量の表示がない製品は企業での品質管理ができていない可能性が。
過去には、成分名のみの表示で含有量表示がない製品を分析すると、実際には表示されていた成分が入っていなかったという事例もありました。
成分量の表示がない健康食品は避けた方が良いかもしれません。
成分の種類が多い健康食品は危険が伴う
1つで様々な成分が含まれる健康食品は経済的で、効果も強くなりそうな感じがします。
しかし、成分1つ1つは健康効果があったとしても成分同士の相性が悪く、健康を害する可能性が。
機能性表示食品を含め、健康食品の中には悪影響を及ぼす成分の組み合わせが確認されずに販売されているケースがあります。
全て天然・自然由来の成分でできていれば大丈夫なのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、天然成分が安全・有効だという保証はありません。
問い合わせ先があるかを確認しよう
健康食品を摂取していて不都合があった時のために製造者や販売者、輸入者といった問い合わせ先が載っているかの確認をしましょう。
トクホのような機能性表示食品であっても健康被害が一切ないとは言い切れません。
問い合わせ先があれば成分や含有量などの製品に関する質問が直接できます。
健康食品を摂るときのポイント
摂取量を守ろう
健康食品の摂りすぎは過剰症のリスクがあります。
例えば、血流の改善や抗酸化作用が期待されるビタミンEは摂りすぎると出血や筋力低下、疲労、吐き気、下痢などの症状が出るという報告があります。
製品に記載されている摂取目安量や使用上の注意などを守りましょう。
同時に何種類も摂取しない
健康食品を選ぶ時のポイントで、成分同士の相性が悪いと健康被害が出る危険があることを紹介しました。
健康食品の複数種摂取も、同様に成分間の作用が未知ですのであまりおすすめできません。
さらに、問題が起きた時にどの製品が問題だったのかという原因特定を難しくしてしまうという点からも避けるべきといえそうです。
医薬品との併用も薬の効果を失わせることがあります。
併用したい場合は医師に必ず相談しましょう。
まずは自分の生活習慣を見直そう
健康食品には国の基準に従った保健機能食品であるトクホ(特定保健用食品)、機能性表示食品、栄養機能食品から、効果が未知なものまで様々あります。
健康食品そのもので健康を手に入れられる訳ではなく、栄養、運動、睡眠といった生活習慣が健康的であることではじめて健康効果が期待されます。
まずはご自身の生活習慣を見直すことが大切です。
健康食品を選ぶ際「コレステロールを下げる」「脂肪が気になる方に」「ダイエットに効く」「美白効果」などぱっと見の印象で選んでしまうことが多いかもしれませんが、イメージだけで選ぶと危険なことも。
パッケージの成分表示をよく読んで検討しましょう。
含有成分の量や問い合わせ先が不明瞭なものは怪しいかもしれません。
健康食品をたくさん摂れば健康になれそうな感じがしますが、過剰症のリスクがありますし、成分同士の相性が悪いと健康障害を引き起こすこともあります。
トクホであろうと、健康食品の複数種摂取、大量摂取は控えましょう。
健康食品ありきの健康ではなく、健康食品をきっかけに運動してみよう、油っこいものを減らそうなど、日々の生活を改善しよう意識する。そんな関係がいいのではないでしょうか。
参考文献
厚生労働省「健康食品の正しい利用法」<https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000113706.pdf>(参照2019.9.19)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「『健康食品』の安全性・有効性情報」<https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/sp_health.php>(参照2019.9.19)
消費者庁「『機能性表示食品』って何?」<https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/150810_1.pdf>(参照2019.9.19)
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
中嶋洋子(2017)「改訂新版栄養の教科書」新星出版社
森田潤司、成田宏史(2016)「食品学総論(第3版)食べ物と健康1」化学同人