内臓脂肪が気になる人へ、微量栄養素摂取のすすめ

内臓脂肪に微量栄養素(ビタミン・ミネラル)摂取が関係あり?

内臓脂肪面積を適正に保つためには、ビタミンやミネラル摂取が重要かもしれません。
内臓脂肪面積の変化にビタミンおよびミネラルが関係する可能性が報告されています[1]。
この記事では、報告の内容と、意識すべき栄養素の摂取についてお伝えします。 

内臓脂肪の変化に寄与する栄養素を調べた報告、6つの微量栄養素と相関あり

弘前大学の大里らによって、内臓脂肪の変化に相関する栄養素が報告されました[1]。

~以下引用~
624名の健康な人(男性260名,54.0±14.2歳;女性364名,55.1±13.6歳)を対象に2年間の包括的な縦断的研究を行い、33の栄養素摂取量が内臓脂肪の変化に寄与するか否かを調査した。
分析の結果、多量栄養素と微量栄養素が相互交絡因子であったため、多量栄養素摂取量で調整後,内臓脂肪面積と微量栄養素摂取量との関連性を評価した。その結果、マンガン、カリウム、マグネシウム、ビタミンK、葉酸、パントテン酸は内臓脂肪面積の変化と有意に反比例していた。また,可溶性食物繊維との間にも有意な反比例の関係が認められた.一方、一価不飽和脂肪の摂取量は、内臓脂肪面積の変化と有意な正の相関が認められた。
~引用終わり~ 

意識したい6つの微量栄養素、摂取基準と摂取のポイント

この報告では、以下のビタミン・ミネラルの摂取が内臓脂肪面積と反比例すると述べられています。

・ビタミンK
・葉酸
・パントテン酸
・カリウム
・マグネシウム
・マンガン

これらの栄養素について、摂取量の基準および摂取するときのポイントをご紹介します。 

ビタミンK

日本人の食事摂取基準[2]において、ビタミンK摂取の目安量は成人で150 µg/日と策定されています。

ビタミンKは、納豆や、モロヘイヤやほうれんそうといった緑黄色野菜、ひじき,植物油などに多く含まれます[3]。
納豆1パック(40 g)には240 µg、ゆでたモロヘイヤ1食(60 g)には270 µgのビタミンKが含まれます。 

葉酸

葉酸はビタミンB9とも呼ばれます。
日本人の食事摂取基準における葉酸の推奨量は240 µg/日です(成人男女)。
血清参照値(3 ng/mL以上)を満たすには400 µg/日以上の摂取が必要である可能性も報告されており[4]、積極的に摂取すべきと言えるでしょう。

葉酸はほうれん草などの緑黄色野菜、のり、レバーなどに豊富に含まれます[3]。
水に溶け出る、熱に対して不安定といった化学的性質を持つため、調理の際には気を付けましょう。
サプリメントによって摂取する葉酸は、食品中のものと比較して生体利用率が高いため、サプリメントで補うことも有効です。 

パントテン酸

パントテン酸は欠乏の予防のために、目安量が策定されています。目安量とは、欠乏症を予防するには十分な量である、という意味です。その目安量は、5 mg/日と策定されています[2]。

様々な食品に含まれていますが、レバーや納豆、サーモン、玄米などに特に多く含まれています。
日々の食卓に取り入れてみると良いでしょう。 

カリウム

日本人の食事摂取基準[2]では、女性2,600、男性3,000 mg/日以上のカリウム摂取を、高血圧症の予防のための目標量として策定しています。

カリウムはいも類や野菜類、果実類、ひじきなどの海藻類に豊富に含まれているため、これらの食材を活用しながら献立を立てると良いでしょう。
手軽に補うには、普段の間食を干し芋やドライフルーツに置き換えるのもおすすめです。
1つの食材で一度に1,000 mg以上を補うことは難しく、複数の食材から摂取していくことが重要です。
水に溶け出てしまうため、ゆでる調理をするときはゆで過ぎないようにする、生で食べられる食材を活用する、といった工夫で効率よくカリウムを摂取できるでしょう。
切った断面からも出ていくため、野菜はカットする前に洗うのがおすすめです。 

マグネシウム

成人男性で320~370 mg/日、成人女性で270~290 mg/日がマグネシウム摂取の推奨量として設定されています[2]。
一方、平成30年度国民健康・栄養調査における成人のマグネシウム摂取量の平均値は男性290 mg/日、女性258 mg/日であり、推奨量には届いていません。

マグネシウムを比較的多く(100 gあたり50 mg以上)含む食品には、ほうれんそう、木綿豆腐、水戻しわかめなどがあります[3]。
また、一般に魚介類は肉類よりも多くのマグネシウムを含んでいます。さらに日常的に大量に食べるものではありませんが、アーモンドなどのナッツ類や焼きのりは100 gあたりで300 mg程度のマグネシウムが含まれています。 

マンガン

マンガンの推定平均必要量は明らかにされていませんが、約2 mg/日程度と考えられています。
日本人の食事摂取基準では、マンガンの目安量を日本人の平均的なマンガン摂取量にもとづいて成人男性で4.0 mg/日、成人女性で3.5 mg/日としています[2]。
この値は欧米で策定されている目安量(約2.5 mg/日)を大きく上回るものであり、日本人の多くはマンガンを十二分に摂取しているといえます。

マンガンは植物性の食品に多く含まれており、緑茶の浸出液にも100 mLあたり約0.3 mg含まれています[3]。
植物性食品の摂取が少ない人は、ペットボトル1本(500 mL)程度の緑茶を飲用することでマンガン摂取を補うことができるでしょう。
なお、厳格な菜食ではマンガン摂取が10 mg/日近くに及ぶことがあるので過剰摂取に注意する必要があります。 

引用文献

[1] Ozato N, Saito S et al. Association between Nutrients and Visceral Fat in Healthy Japanese Adults: A 2-Year Longitudinal Study Brief Title: Micronutrients Associated with Visceral Fat Accumulation. Nutrients. 2019; 11(11): 2698.

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-07-03)
[4] 松本希美, 溝畑秀隆ら「女子大生における血清葉酸値と葉酸摂取量の比較検討」, <http://www.jtnrs.com/sym29/07-No-P-02.pdf>(参照2020-04-24)

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