吸収率の低さに注意したいカルシウム。相性の良い・悪い栄養素をおさえて吸収効率UP!

人生100年といわれるようになった今日、最期まで自分の足で歩いて健康的に過ごしたいものです。
寝たきりを防ぐのに「丈夫な骨」は大切な要素。
カルシウムはそんな丈夫な骨を作るもとになってくれます。

しかしカルシウムは全世代で不足している上に吸収率があまりよくないと言われています。
そこで、カルシウムを効率よく摂るためのポイントを紹介します。

カルシウムのおさらい

骨や歯を作るだけでなく、生活習慣病予防効果への期待もされている

カルシウムは生体に最も多く含まれるミネラルで、その99%が骨や歯といった組織で体を支える働きをしています。
そのほかに、カルシウムは血液にも溶け込んでホルモンの分泌調節などを通じ、あらゆる生理機能の調節を行います。
また、高血圧予防やダイエット、善玉コレステロール(HDL)増加効果があるという報告もあり、さまざまな健康効果が期待されています。

乳製品、大豆製品、小魚、緑黄色野菜に豊富

カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚、一部の緑黄色野菜などに多く含まれます。
1食あたりに含まれるカルシウムが豊富な食品を表に示しました。
緑黄色野菜では葉物野菜が比較的カルシウムが豊富といえそうです。
チーズや小魚はカルシウムが豊富であると同時に塩分も豊富。
これらの食材の摂りすぎは塩分過剰につながり、高血圧などのリスクを高めますので、カルシウム強化の中心的な食材にするのには注意が必要です。

全ての世代で不足している

上図は世代別のカルシウム摂取状況と推奨量(男女別)です。
このように、日本ではすべての世代でカルシウムが不足しており、特に若い世代での不足が目立ちます。
20代では1日あたり200~300mg不足しているので、牛乳1~1.5杯分のカルシウムを追加摂取する必要があると考えられます。

カルシウムのは吸収率は悪い!?

通常の食事のカルシウム吸収率は25~30%程度

実は、摂取したカルシウムが全て体内で利用されているわけではありません。

性別や年齢によって異なりますが、成人では通常の食事での吸収率は25~30%程度だと考えられています。
さらに食材によってもカルシウムの吸収率は異なり、乳製品50%小魚30%豆・野菜17%程度だといわれています。
利用されなかったカルシウムは体外に排泄されてしまいます。

喫煙やアルコールはカルシウム吸収を妨げる場合が

タバコは胃の働きを抑えて食欲がなくなるに加え、カルシウム吸収を妨げることがあります。
さらに、喫煙により女性ホルモンの分泌が妨げられます。
女性ホルモンには骨から血液中へのカルシウム流出を防ぐ作用があります。
つまり、喫煙で女性ホルモンが減少し、カルシウムが骨に定着する量が減少してしまうことになります。
特に女性の喫煙は注意が必要です。

また、アルコールは利尿作用があるために尿と一緒に必要なカルシウムが排泄してしまう場合があります。
このように、喫煙やアルコールはカルシウム吸収を低下させてしまうことがあります。

効率的にカルシウムを摂るには?

乳製品は吸収率が良い

前述のように、乳製品のカルシウム吸収率は50%と他の食品に比べて吸収率が高めです。
これは、牛乳にカルシウムの吸収を促進する成分である乳糖やカゼインホスホペプチドが含まれているためだといわれています。

コーヒーに牛乳を加える、小腹がすいたときにヨーグルトを食べるなどすると気軽にカルシウム摂取ができます。
チーズも手軽にカルシウムを摂れる食品ですが、塩分が多めなので1口サイズを1日1個程度にしておくのが良いかもしれません。

ビタミンD、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)、フラクトオリゴ糖はカルシウム吸収を助ける

ビタミンDはカルシウム吸収に必要なタンパク質の合成を促進してくれます。
クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)はカルシウムの安定的な吸収を助けてくれます。
フラクトオリゴ糖は腸内のビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌を増やします。
その善玉菌が腸内を酸性にしてカルシウムが吸収されやすい状態をつくってくれます。

ビタミンDは魚類やきのこ類に豊富です。
日光に当たることでも体内で生成できます。
フラクトオリゴ糖はごぼうやたまねぎ、バナナ、スイカなどに含まれています。
CCM、フラクトオリゴ糖はトクホの成分としても使われています。

リンの摂りすぎに注意

リンはカルシウムと一緒に骨や歯の構成成分となる栄養素です。
リンは骨を作るのに大切な栄養素である一方で、過剰に摂取すると骨のカルシウムが血液中に溶け出てしまいます。
そのほかにも、カルシウムと相性の良いビタミンDの吸収率を低下させる作用も持っています。

通常の食生活においてリンは不足することはなく、むしろ過剰摂取傾向にあります。
リンは魚や肉、加工食品に多く含まれています。
特に加工食品に含まれるリンの吸収率は魚や肉に含まれるリンの吸収率よりも高いため、あまり自炊をしない人はリンを過剰摂取している可能性があります。

サプリで摂るときは

サプリで飲むならビタミンDを合わせて

カルシウムをサプリで摂取するときはビタミンDも合わせて摂るのが良さそうです。
カルシウム単体のサプリでは骨折予防効果が少なく、ビタミンDと合わせてカルシウムサプリを摂取すると骨折予防効果があるという結果を得た研究が複数存在するためです。

ただ、カルシウムサプリの効果については研究段階で、ビタミンDを合わせても効果は変わらないという研究も存在します。

サプリを摂るときは1日2500mgまで

カルシウムを摂りすぎると心血管疾患のリスクが上昇するという報告があります。
結石や鉄・亜鉛の吸収障害、便秘などが生じる可能性があります。
食事からのカルシウム摂取を考えるとサプリからの摂取は2500mgより少なめにした方が良いかもしれません。
日本人の通常の食品からの摂取でこの値を超えることは非常にまれですので、サプリを摂らない方は摂取過剰を気にする必要はあまりないでしょう。

まとめ

カルシウムは丈夫な骨や歯を作る大切な栄養素です。
生活習慣病予防効果への期待もされています。
日本人の多くが不足しており、特に若い世代は牛乳1~1.5杯分のカルシウムを追加摂取する必要がある状況です。

カルシウムの吸収はあまりよくなく、性別や年齢などによっても異なりますが、成人の一般的な食事におけるカルシウム吸収率は25~30%だといわれています。
喫煙やアルコール習慣はカルシウムの吸収を邪魔する場合があります。

カルシウムの吸収は特に乳製品が良く、吸収率は50%程になります。
他にもビタミンD、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)、フラクトオリゴ糖はカルシウムの吸収を上昇させてくれます。

リンの過剰摂取はカルシウム吸収の妨げになりますので、加工食品を食べることの多い人は気を付けましょう。

サプリで飲むときは、ビタミンDを合わせた方が効果があるといわれていますが、過剰症を防ぐために、1日2500mgを限度にしましょう。

参考文献

公益財団法人 骨粗鬆症財団 http://www.jpof.or.jp/prevention/cigarette/ (参照2020.1.30)
公益社団法人 日本健康・栄養食品協会 http://www.jhnfa.org/mineraru-0.html (参照2020.1.30)
厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
兼松重幸(1953)「成人に於ける各種食品中のカルシウム利用並にカルシウム所要量に関する研究」栄養と食糧
田知陽一「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社(2018)
内藤博(1986)「カゼインの消化時生成するホスホペプチドのカルシウム吸収促進機構」日本栄養・食糧学会誌

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