妊娠期のカルシウム不足が出産後の高血圧につながる

妊娠期のカルシウム摂取と出産後高血圧に関する報告

ノルウェーのベルゲン大学のEgelandらの研究グループは、妊娠中期のカルシウム摂取量が少ないことが出産後の高血圧につながると報告しています[1]。

~以下引用~
Egelandらは、妊娠中のカルシウム摂取が妊娠後の高血圧リスクに関連するかを調べるために、ノルウェーの妊婦60,027人を対象に前向きコホート研究を行った。食事調査によって見積もった妊娠中期のカルシウム摂取量に従って4つのグループに分け、出産後10年以内の高血圧発症リスクを比較した。
その結果、妊娠中に正常な血圧だった対象者において、食事からのカルシウム摂取量がもっとも少ない群(738 mg/日以下)は、カルシウム摂取量がもっとも多い群(1,254 mg/日以上)と比較して出産後10年以内に高血圧になるリスクが1.34倍であった。また、妊娠性高血圧症の対象者についての同様の比較では、カルシウム摂取量が少ない群は、出産後の高血圧リスクが1.62倍であった。
~引用終わり~ 

下記に紹介しますが、日本人の平均的なカルシウム摂取量は600 mg/日未満であり、多くの人が上記の研究でいう「もっともカルシウ摂取量の少ない群」に属しています。
平均的なカルシウム摂取量に大きな違いがある欧米での結果が日本人に適用できるか検討する必要がありますが、この報告は、妊娠期にカルシウムを十分に摂取することが出産後の血圧を正常に保つことにつながる可能性を示唆しています。

妊婦におけるカルシウム摂取

カルシウムは胎児の骨格形成に必要な栄養素の一つであるため、妊娠中は不足しないように注意すべきです。
ただし、妊娠期はカルシウムの吸収率が上がるため、妊娠女性における摂取の推奨量は非妊娠女性と同じく650 mg/日です[2]。
平成29年の国民健康・栄養調査による妊婦のカルシウム摂取量は平均436 mgです[3]。
これは女性全体(20歳以上)の平均508 mgと比較しても少なく、65~74歳女性の平均561 mgと比較するとさらに差が開きます。
妊娠の有無に関わらず特に若い女性において、カルシウムは摂取不足の傾向にあるといえます。
妊娠が想定される女性においては、普段からカルシウム摂取を高める努力が必要です。
日本人の食生活においてカルシウム摂取を高めることは難しいので、専門家に相談しながらサプリメントを活用するのも選択肢としてありえると思います。

おわりに

妊娠中のカルシウム不足を防ぐことで妊娠後の血圧を正常に保つことができるかもしれません。
妊娠中はカルシウムの吸収率は上がるようですが、ふだんよりもさらに積極的な摂取を目指すべきでしょう。

引用文献

[1] Egeland GM, Skurtveit S, Sakshaug S et al. Low Calcium Intake in Midpregnancy Is Associated with Hypertension Development within 10 Years after Pregnancy: The Norwegian Mother and Child Cohort Study. J Nutr. 2017; 147: 1757-1763

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」,< https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html>(参照2020-03-04)

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