目指せ健康長寿、認知機能にビタミンが関与しているかも
認知機能の低下が、栄養状態の悪化と深く関係しているらしいことは、世間でも言われています。
ビタミンB6の摂取不足が認知機能低下につながるという報告があります[1]。
ビタミンB6の豊富な食品やサプリメントを活用して、十分量の摂取を目指すとよいでしょう。
この記事では、報告の内容と、ビタミンB6の摂取基準や摂取のポイントをご紹介します。
認知機能の低下とビタミンB群の摂取に関する報告、ビタミンB6不足でリスク3.5倍
イギリス、アルスター大学のHughesらによって、高齢者の認知機能とビタミンB6摂取の関連が報告されています[1]。
~以下引用~
この研究は、葉酸や代謝に関連するB群ビタミン摂取量と関連するバイオマーカー値の低下が、認知低下につながるか否かを調べるために、健常高齢者155名(平均年齢73.4±7.1歳)を4年間追跡し評価したものである。
4年の間に認知MMSEスコアは全体的に低下したが、特に,低ビタミンB6栄養状態(血中のピリドキサール-5-リン酸<43 nmol/L)での認知スコア低下の加速リスクは高く,適正濃度を維持した集団の3.5倍であった。同様に、ビタミンB6の摂取量の低下(0.9〜1.4 mg /日)も、認知機能低下率の増加と関連していた。
他のB群ビタミンについては、認知機能の低下は摂取量と関連するバイオマーカー値との間で有意な関係は観察されなかった。
結論として、健康な高齢者において,ビタミンB6の摂取量および関連するバイオマーカー値が低いと認知低下のリスクが高くなることが示唆され、ビタミンB6は、加齢による認知健康の維持を助ける上で重要な保護因子である可能性がある
~引用終わり~
ビタミンB6の摂取基準と摂取するポイント
日本人の食事摂取基準では、成人男性において一日あたり1.4 mg/日の摂取が推奨されています[2]。
ビタミンB6の必要量は、アミノ酸の異化代謝量に応じて高まり、タンパク質1 g当たり、0.023 mgのビタミンB6が必要です。
1日に100 gのタンパク質を摂取すると、2.3 mgのビタミンB6を摂取するといいですよ、ということになります。
今回の報告では、1.4 mg以下を「摂取量の低下」としているので、認知機能を低下させないためにもこの値以上を目指してみるとよいでしょう。
アミノ酸から生成するモノアミン類と呼ばれる神経伝達物質があります。このモノアミン類の生成にビタミンB6が必要です。
ビタミンB6は赤身の魚や鶏むね、豚ヒレなどの動物性食品、さつまいも、バナナ、玄米などに多く含まれます[3]。
朝食や間食にバナナを1本プラスするだけで、0.38 mgのビタミンB6が手軽に補えるため、活用してみても良いでしょう。
鶏むね肉(皮つき)では100 gあたりに0.57 mgに対し、鶏もも肉(皮つき)では0.25 mgしか摂れません。
普段料理をする人であれば、もも肉を使うところをむね肉に置き換えてみるのも良さそうです。
なお、ビタミンB6は、大量摂取を続けることで健康障害が見られることより、耐容上限量が設定されています(50~60 mg/日、成人男性)[2]。
耐容上限量とは、「この摂取量以上を習慣的に続けると健康障害のリスクが高くなりますよ」という意味で、一回だけの摂取量が少し超えても直ちに健康障害のリスクが高まるという意味ではありません。
気持ちとしては、習慣的に耐容上限量には近づきたくないですね、という数値ですね。
このことを理解し、ビタミンB6サプリメントやビタミン剤で適切に補充するのもよいでしょう。
ビタミンB6の栄養状態は、尿分析により知ることができます。
引用文献
[1] Hughes CF, Ward M et al. B-Vitamin Intake and Biomarker Status in Relation to Cognitive Decline in Healthy Older Adults in a 4-Year Follow-Up Study. Nutrients. 2017; 9(1):53
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)