栄養と脳の関係 ~頭の働きには鉄が関係していた!?~

頭が働かないときは栄養状態を見直すべきかも

頭の回転が遅い、なかなか頭が働かない、そんな日もあるかもしれません。
この悩み、改善できると嬉しいですよね。
鉄の摂取が体内の鉄状態を良くし脳の動きを改善することが報告されています[1]。

以下に、報告の内容と、鉄の摂取基準および摂取のポイントを紹介します。

成人における鉄の摂取状態と脳活動に関する報告

~以下引用~
この研究は、鉄の栄養状態が低い(血清フェリチンが20 µg / L未満)アフリカのルワンダの女子大学生(18〜27歳)55人を対象に、栽培時に鉄を強化した豆(鉄強化豆)を投与し、鉄の栄養状態と脳の活動の変化を二重盲検無作為化介入研究により検討したものである。すなわち、被験者を無作為に2群に分け、一方には鉄強化豆(鉄86.1 ppm)、もう一方には通常の豆(鉄50.1 ppm)をそれぞれ毎日175 g(調理後の重量)ずつ18週間摂取させ、ヘモグロビン、フェリチン、トランスフェリン受容体、および体内鉄によって鉄状態を、5種類のコンピュータ作業によって認知能力を、作業中の脳波解析によって脳の活動を、それぞれ評価した。
その結果、鉄強化豆の投与は、ヘモグロビン、フェリチン、体内鉄、注意課題と記憶課題への反応速度、記憶検索の感度と効率、脳波の振幅とスペクトルパワーの測定において顕著に改善を示した。この結果は、鉄の栄養状態の変化が脳の活動の活発にして認知能力を高めるという可能性を示している。
~引用終わり~ 

鉄の摂取基準と摂取のポイント

この研究では調理後の豆の重量しか示されていないので、対象者が豆からどの程度の鉄を摂取したのか厳密にはわかりません。
しかし、食品成分表に記載の乾燥豆とゆで大豆の鉄濃度の違いから類推すると、調理後の鉄強化豆は約35 ppm、通常の豆は約20 ppmの鉄を含んでいたと考えられます。
すなわち、175 gの調理された豆を摂取することで、鉄強化豆摂取群では6.1 mg/日、通常の豆摂取群では3.5 mg/日の鉄を摂取したと推定でき、鉄強化豆摂取群は鉄を2.6 mg/日多く摂取したことになります。
平成30年度の国民健康・栄養調査によれば、20〜50歳代女性の鉄摂取量の平均値は6.5〜7.0 mg/日で、日本人の食事摂取基準[2]における月経のある成人女性の鉄の推奨摂取量10.5〜11.0 mg/日を大きく下回っています。
この研究では鉄の栄養状態の低い女性を対象にしていますので、結果を鉄摂取量の少ない日本人女性に適用してもいいと思います。

鉄はレバーや赤身肉などの肉類や、かつおやいわし、あさりといった魚介類、野菜であれば小松菜や豆類に多く含まれます[3]。

栄養学の教科書では動物性食品中の鉄はヘム鉄の形態であり、無機鉄の形態である植物性食品中の鉄よりも吸収が良いと記述されています。
しかし、最近の研究では、植物性食品中の鉄の吸収率は鉄の栄養状態によって増減することから、鉄の要求量が高いときには動物性食品の鉄よりも吸収率は高くなります。
また、鉄は過剰に摂取すると、がんを始めとする様々な慢性疾患に罹患するリスクが高くなりますが、植物性食品中の鉄は鉄が充足している場合には吸収率が低下するので過剰摂取のリスクは低くなります。
したがって、鉄の摂取を高めるにあたって、動物性食品にこだわる必要はないといえます。

引用文献

[1] Wenger MJ, Rhoten SE et al. Changes in Iron Status Are Related to Changes in Brain Activity and Behavior in Rwandan Female University Students: Results from a Randomized Controlled Efficacy Trial Involving Iron-Biofortified Beans. 2019; 149(4):687-697.

参考文献

[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)

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