骨の健康に大切な栄養素、ビタミンB12不足にご注意を
年齢を重ねると骨密度や骨塩量が気になる女性が増えてくるかと思います。
これらにはビタミンD、ビタミンKやカルシウムが関係していることは周知されていますね。
実は、ビタミンB12が骨の健康に関連することも報告されています[1]。
この記事では、その報告の内容と、ビタミンB12の摂取に関する情報をお届けします。
ビタミンB12と骨の健康に関する報告
オランダ、ワーゲニンゲン大学のDhonukshe-Ruttenらによって、女性では血漿ビタミンB12濃度が低いと骨粗しょう症リスクが高いと報告されています[1]。
~以下引用~
この研究は、高齢者の骨ミネラル含有量(BMC)、骨ミネラル密度(BMD)と血漿ビタミンB12濃度との関連を調査したものである。オランダの虚弱な高齢者194名(女性143名、男性51名、平均年齢は78歳)を対象に、食事調査と血漿中のビタミンB12測定などを行った。
結果、36名が骨粗しょう症(男性6名、女性30名)、88名が骨減少症(男性19名、女性69名)、70名が正常(男性25名、女性45名)であり、骨粗しょう症の女性は、ビタミンB12濃度が正常および骨減少症の女性よりも有意に低い値を示した。ビタミンB12濃度で3つに分けたとき、骨粗しょう症の有病率は濃度が高い群(>320 pmol/ L)で6%であったのに対し中間群(210〜320 pmol/L)で25%、低い群(<210 pmol/L)で37%であった*。これらの結果は、ビタミンB12の状態が高齢女性の骨の健康に関連していることを示唆している。
なお、男性においては、骨ミネラル含有量(BMC)、骨ミネラル密度(BMD)と血漿ビタミンB12濃度との関連には有意な関係は認められなかった。興味のある事実として、血漿ビタミンB12濃度は、女性の方が男性よりも高かった。女性は、血液中から細胞内へのビタミンB12輸送能力が、男性よりも低い可能性がある。そのため、骨ミネラル含有量(BMC)、骨ミネラル密度(BMD)と血漿ビタミンB12濃度と間に関連性が認められたかもしれない。
~引用終わり~
*この報告における血清中のビタミンB12濃度は下記に示した食事摂取基準で採用されている値、100 pmol/Lよりもはるかに高い値です。日本人の若年成人の血清ビタミンB12濃度は670±200 pmol/L、若年男子では340±50 pmol/Lと報告されています[4]。
ビタミンB12の摂取基準と摂取のポイント
「日本人の食事摂取基準」におけるビタミンB12の推奨量は2.4 µg/日です(成人男女)。
これは血清ビタミンB12濃度を適正に維持する(100 pmol/L以上 ≒135 pg/mL以上)ために必要な摂取量をもとに算定し、策定された数値です[2]。
ヒトには、ビタミンB12を必要とする酵素が二つありますが、これら二つの酵素活性を十分に発揮させることができるビタミンB12摂取量を考慮して、必要量を算定するという考え方が、「日本人の食事摂取基準2020年版」[2]のビタミンB12の項の「今後の課題」に記載されています。
5 µg/日程度摂取した方が良いのかもしれません。
ビタミンB12はあさりなどの貝類やさばなどの魚介類、レバーなどに豊富に含まれます[3]。
一度の食事で吸収できる飽和量は2.0 µgと推定されており[2]、一度に多量のビタミンB12を含む食事を摂るより三度の食事でこまめに摂取するのが効果的です。
引用文献
[1] Dhonukshe-Rutten RA, Lips M et al. Vitamin B-12 status is associated with bone mineral content and bone mineral density in frail elderly women but not in men. J Nutr. 2003; 133(3): 801-7.
参考文献
[2] 厚生労働省(2019)「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」, <https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>(参照2020-02-14)
[3] 文部科学省(2019)「食品成分データベース」, <https://fooddb.mext.go.jp/>(参照2020-02-14)
[4] Shibata K, Fukuwatari T, Ohta M et al. Values of water-soluble vitamins in blood and urine of Japanese young men and women consuming a semi-purified diet based on the Japanese Dietary Reference Intakes. J Nutr Sci Vitaminol. 2005;51(5):319-28.