ビタミンB群の1つで、アミノ酸代謝や神経伝達物質の生成などに関与するビタミンです。
ビタミンB6活性をもつ化学物質にピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンなどがあります。
ビタミンB6の機能
たんぱく質の代謝を助ける
摂取されたたんぱく質は体内でアミノ酸へと分解されます。
その分解されたアミノ酸を使ってたんぱく質が作られ、筋肉、肌、内臓といった体の組織などができます。
ビタミンB6は、こうしたたんぱく質の分解と合成の過程で使用される酵素を助ける補酵素として働きます。
また、必要以上にたんぱく質を摂取した場合や糖質と脂質からのエネルギーが不足した場合、たんぱく質はエネルギー源にもなり、この過程にもビタミンB6が必要になります。
神経伝達物質の合成に関わり、他にも様々な効果があるといわれている
アミノ酸からはドーパミンやアドレナリン、セロトニン、ギャバ(GABA,γ-アミノ酪酸)といった脳内で情報伝達を行う神経伝達物質が合成されます。
ビタミンB6はこの神経伝達物質の合成を促進します。
他にも、「免疫システム強化」「皮膚の障害予防」「花粉症・アレルギー症状の緩和」「つわりの軽減」「PMS(月経前症候群)の緩和」等の効果が得られると考えられています。
ビタミンB6の消化・吸収・代謝
小腸で吸収され、利用率は73%程度
小腸で吸収されます。
消化の過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる食品にも影響されます。
日本の平均的な食事での利用率は73%と考えられています。
腸内細菌によっても合成される
ビタミンB6は腸内細菌においても合成されます。
食物繊維の一種であるセルロースを多く含む食材を摂るとその合成量は増加すると考えられています。
ビタミンB6の摂取量
成人の男女で、1.1~1.4mg/日摂取が目安とされています。
プロテインを使用するなどしてたんぱく質の摂取が多い時には必要量が増加します。
また、上限量が定められています。
過不足のリスク
通常の食事摂取で過剰症の心配はないが、大量摂取で感覚神経障害のリスク
通常の食事摂取で過剰摂取による健康障害が発現した報告はありません。
ただし、薬やサプリなどで大量摂取した場合に「感覚性ニューロパシー」という健康障害が現れることがわかっており、耐用上限量が設定されています。
感覚性ニューロパシーは手足にしびれや痛みがあったり、様々な感覚を正常に認識できなくなったりします。
不足することはあまりないが、皮膚炎や神経障害などが起きる
ビタミンB6は体内でも合成されるため、通常の食事で欠乏症が起きる心配はありません。
欠乏すると神経障害、口角炎をはじめとする皮膚炎、貧血、脂肪肝、不眠症、うつ、脳波異常、痙攣発作などが起きると考えられています。
また、ビタミンB6は大腸がんを予防する効果があるといわれているため、大腸がんのリスクを上昇させる可能性もあるといえます。
ビタミンB6が多く含まれる食品10品目
魚介類、肉類、野菜、果物と幅広く含まれています。
米にも多く含まれるため、米を主食とする日本人はビタミンB6を補給しやすい状況にあるといえます。
調理では損失の少ない栄養素ですが、紫外線で分解されやすいため日光のあたらない場所での保管がおすすめです。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
奥恒行、柴田克己(2017)「基礎栄養学(改定第5版)」南江堂
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社矢野元照(1956)「人体腸内細菌によるビタミンB6の合成とセルロースの影響」会誌ビタミン