血をつくり全身に酸素を運んでくれる、鉄の基本を知る。

原子番号26の遷移金属元素です。
血の素になる栄養素で、女性の場合は月経時、妊娠期や授乳期等は特に必要とされます。


鉄の機能

血液の成分となる

赤血球の成分であるヘモグロビンを構成するミネラルです。
肺で取り込まれた酸素を全身に運び、二酸化炭素を回収して排泄する役割を担います。
また筋肉内にあるミオグロビンという成分にも含まれ、筋肉に酸素を取り込む働きをしています。


鉄の消化・吸収・代謝

十二指腸から小腸で吸収され、吸収率は10~15%程度

食事で摂取した鉄は、十二指腸から小腸の上部で吸収されます。
その後、血液中のトランスフェリンと呼ばれる糖たんぱく質と結合して骨髄や肝臓などの臓器に運ばれて貯蔵されます。
吸収率は低く、健康な成人の場合は約10~15%程度だと考えられています。
食材によっても吸収率は異なり、肉や魚といった動物性食品に含まれる鉄(ヘム鉄)は15~35%程度、野菜や果物といった植物性食品に含まれる鉄(非ヘム鉄)は2~20%だといわれています。

鉄の摂取量

成人の男女で、6.0~7.5mg/日摂取が推奨量とされています。
月経によって鉄が体外に流れ出てしまうため、月経のある世代の女性は推奨量が増加します。
そのほかに、妊娠・授乳中の付加量が設定されていますが、推奨量は月経なしの数値にプラスして計算します。
つまり妊娠中期の30代女性の場合、推奨量は6.5mg+9.5mg=16.0mg/日となります。
なお、耐用上限量の設定があります。

過不足のリスク

サプリなどの過剰摂取による過剰症リスクがある

吸収率が低く、過剰な鉄分は吸収されないようになているため、通常の食事で過剰摂取が生じる可能性はないとされています。
サプリメントなど健康食品の摂取で過剰が起こる可能性があり、利用には注意が必要です。
体内に過剰に鉄が蓄積されると体内の酸化を促進し、炎症の原因となります。
嘔吐などの胃腸症状がでることもあります。
他にも肝臓がん、心疾患のリスクを高める可能性があります。

月経・妊娠・授乳期の女性は不足しやすく、貧血が起きる

欠乏すると貧血(鉄欠乏性貧血)が起きます。
体内に運ばれる酸素が不足して疲労、めまい、立ちくらみ、頭痛、動悸、息切れ、食欲不振等様々な症状が現れます。
鉄はある程度体内に貯蔵される上にリサイクルされます。
そのため男性や閉経後の女性の鉄摂取が不足しても、欠乏症はあまり起きません。
一方、月経のある女性や妊娠・授乳期の女性は鉄分がたくさん失われるため、欠乏症が起きやすい傾向にあります。

鉄が多く含まれる食品

レバーや赤身の肉、貝類などに鉄が多く含まれます。
植物性食品に含まれる鉄(非ヘム鉄)の吸収はあまりよくないと紹介しましたが、ビタミンCや酸味のある食品と一緒に食べることで鉄の吸収率が上昇します。
なお、動物性食品でも卵や乳製品に含まれる鉄は植物性食品と同様、吸収のよくない非ヘム鉄に分類されます。こちらもビタミンCなどと合わせると良いでしょう。
反対に、コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれる「タンニン」という成分は鉄の吸収を抑えてしまいます。
こうした飲料の摂取は、食事前後30分を外せば影響が少ないと考えられています。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
奥恒行、柴田克己(2017)「基礎栄養学(改定第5版)」南江堂
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社
田中明、宮坂京子、藤岡吉夫(2015)「栄養科学イラストレイテッド臨床医学 疾病の成り立ち改訂第2版」羊土社
U.S.Department of Health & Human Services(2020)”Iron Fact Sheet for Health Professionals”<https://ods.od.nih.gov/factsheets/Iron-HealthProfessional/>(参照2020.04.18)

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